
石田拓実の『はしたなくて ごめん』の3巻は、ボーイ・ミーツ・ガールの枠組みにセックスへのアプローチを旺盛にした1巻や2巻とは、少々表情を違えている。じっさいメインの登場人物は、本来のヒロインである真奈緒の妹、桃花と、彼女に一途な想いを寄せる年上の幼馴染み、ハルにシフトしているし、「あとがき」にあたる項で作者が「私なりの中学生日記風を目指してみました」といっているが、桃花の置かれた半径の狭い世界をベースに、思春期が誠実なものであるとすれば、その誠実さのスケッチであるような側面が強まった。無知であるがゆえに無垢であった桃花が、ハルとの再会を経、学校での立場を悪くしていくなか、それまで気づかなかった人間関係のデリケートな表情を見、屈託してしまうのではなく、受け入れ、成長のサインをかざしていくところが、とても素敵だと思う。目の前で繰り広げられている光景に関し、必要最小限の好奇心しか持ち合わせていなかった少女が、たとえそれが小さな社会であったとしても、たしかにそこで視野の広がりを手に入れられているのである。
・その他石田拓実に関する文章
『パラパル』
5巻について→こちら
4巻について→こちら
3巻について→こちら
2巻について→こちら
1巻について→こちら