ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年08月13日
 誰かを深く想う、というのは時として地獄であろう。霧里は京都島原を追われ、江戸は吉原へと発つ。しかし彼女は知らないのだ。京都に残された弟の半次郎が、染め物師としての腕前から、その一際立った容貌から、やがて地獄の渦中に呑まれてしまうことを、知らない。宮木あや子の同名小説を斉木久美子がコミカライズした『花宵道中』も3巻であるが、おそらくは意図して安野モヨコふうになっていく絵柄を、いやまあたしかにキャッチーではあるものの、個人的にはあまりよく思わないのだけれど、この作者ならではの表情がそこかしこに生きていて、今にも壊れそうなエモーションをよく掴まえている。いずれにせよ、悲痛である。運命の苛酷さがロマンティックにデザインされることで、吐く溜め息に鮮やかな色彩の宿る、それがとても悲痛に見えてくるのだった。作中の誰しもが業をしょっている。そのことは江戸時代という設定によっている。彼らの心理は現代的に解釈されたものにほかならないが、デフォルメといってもよい、イメージといってもよい、地獄を与えられた人間はかくも苦しんだ顔を持つ。幸福のなかにあってさえ。このような説得力は、笑みの真偽をどう描き分けるかの手つきから、やってきている。

 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
 
・その他斉木久美子に関する文章
 『ワールズ・エンド』について→こちら
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