ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年04月01日
 イルカ

 たとえば、ある登場人物が「男の人ってさ、どうしてマザコンなの?」という。が、しかし、その人はたぶん、もしもマザコンではない男の人に会ったとしたら、この人はどこかおかしい、と思うのではないか。その人にとっての正常な世界では、きっと、男の人はみなマザコンでなければならないのである。フロイトか、ユングか、河合隼雄か、そのあたりをベースにした考えなんだろうけれども、いやいや、それはそれで、そのことに疑いを持たないのだとすれば、じつに一方的な決めつけ、見方ではあるよな、というのが僕のなかにある反発である。さて。帯には〈よしもとばななの新境地!〉とある『イルカ』なのだが、なるほど、これまではセックス(性交)に奔放でありながらも、妊娠する主体を執拗に回避してきたよしもとが、はじめて妊娠する主体を取り扱った内容という意味では、たしかに新しいフェーズに入ったとはいえるのだろうけれど、結果的に、それほど未踏の領域へ踏み込んだという感じをさせないのは、ここでの妊娠が、じつは「できちゃった」という系の出来事に止まるからなのではないか、という気がする。中絶は行われないが、しかし、当初は「望まない妊娠」であったことを考えれば、それこそ斎藤美奈子は、よしもとを「L文学」という範疇ではなくて、「妊娠小説」の範疇でこそ語るべきであろう。心理学的なモチーフと妊娠ということであれば、村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」あたりと読み比べてみると、あんがいおもしろいかもしれない。が、個人的には、夢と偏見だけで、物事のすべてが解決してしまうワンパターンは、長年読み続けているせいもあって、さすがにもうきつい、きびしい。ただ、まあ、オカルトの一言で切り捨ててしまうのはもったいない、なにか、やわらかなイメージだけは未だに買ってはいる。

・その他よしもとばななの作品についての文章
 『みずうみ』について→こちら
 『王国 その3 ひみつの花園』について→こちら
 『なんくるない』について→こちら
 『High and dry(はつ恋)』について→こちら
 『海のふた』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(06年)
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