ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年07月24日
 バビル2世ザ・リターナー 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

 バビル2世復活す。横山光輝がマンガ『バビル2世』に提示した世界像が、はたしてこの現代にどう再現されるのか、『バビル2世 ザ・リターナー』への関心はそこに尽きるのだったが、この1巻に繰り広げられているのは、いやいつもどおり、じつに野口賢らしいサイキック・バトルであった。が、しかし驚くべきなのは、設定自体は『バビル2世』とそのオルタナティヴなエピソードにあたる『その名は101』に、きわめて忠実だという点である。じっさい物語は、『その名は101』の続編を引き受けるかのように、バビル2世こと浩一少年と、彼の血を投与してつくられた超能力兵士たちの死闘を連想させながら、進む。2010年、東京の街を見下ろした学生服の少年は、こう言っただろう。〈始めるぞ アメリカとの戦いを〉と。在日米軍のヘリ部隊が、今まさに、彼に向かい、攻撃をしかけようとしているところだ。このとき、バビル2世をかつて知ったる官房長官の伊賀野は、空前の事態にも顔色一つ変えず〈あんたらアメリカは彼を怒らせた これで終わるとは思わないほうがいい〉と告げるのだった。バビル2世がアメリカと対立しなければならない理由は、作品の裏に伏線のごとく隠されているのだけれども、おそらくは、やがて野口による『その名は101』の解釈となってあらわれてくることを予感させる。バビル2世がロデムと交わしている〈アメリカは世界を統一して世界政府を創ろうとしている 国連と同じく議長はアメリカとはちがう大陸から選ばれるだろう だが陰であやつるのはアメリカだ やろうとしていることは“ヨミ”と同じだ〉という会話が、ひじょうに示唆的だ。もちろんヨミとは、『バビル2世』の本編における最大のライヴァルである。じつは、そのヨミを対照点にし、善悪の抽象性を描くことと、アメリカを仮想敵とし、現実を寓話化することとで、『バビル2世』と『その名は101』は枝分かれしているのだが、『バビル2世 ザ・リターナー』は、双方の展開を統合、ほんらいは主人公であるバビル2世にテロリストの汚名を着せることで、今日的なテーマを組み込もうとしている。要するに、巨大なイデオロギーを持たない世界の正義は何によって保証されるのか、それだと思う。野口の描き出すサイキック・バトルは、超高速をコマ落とし、大きく広げられたカットのなかに、スペクタクルを隆起させる。リニューアルされたロデム、ロプロス、ポセイドンのデザインは迫力に富む。地球規模の危機を持ち込まれ、戦場と化していく日本、〈ぼくはバビル2世 三つのしもべとともに アメリカに宣戦を布告する〉

・その他野口賢に関する文章
 『サンクチュアリ -THE幕狼異新-』(原作・冲方丁)
  1巻について→こちら
 『狗ハンティング』(原作・夢枕獏 / 構成・子安秀明)
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『KUROZUKA -黒塚-』(原作・夢枕獏)
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
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