ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年07月02日
 医龍 23 朝田のQOL (ビッグコミックス)

 この国の日常を戦場と呼び換える力学に少々の抵抗を持たないわけではないが、しかしここにはまさしく戦場が描かれているように思う。乃木坂太郎の『医龍 Team Medical Dragon』は23巻で、前巻の強烈なヒキを受け、さらに目の離せなくなるような展開を繰り広げていく。いやこれまでにもひじょうにスペクタクルの豊富なマンガではあったが、かつてなかったほどの窮地を迎えたにもかかわらず、作中の人物たちが奮迅の活躍を見せていくところに、すさまじい迫力が託されているのである。バチスタチームの柱である朝田が、病院の屋上から落ちた少年を助けようとし、心臓に大きなダメージを負ってしまう。天才というに相応しい医師の、生死と将来とを一身に引き受けなければならない手術を、いったい誰が果たせるであろうか。まさか未だ研修医の伊集院がその大役を買って出た。周囲の困惑をよそに、新兵でしかない伊集院がエースの不在を埋めようとする一方、他の医師もまた、それぞれの戦場とでもすべき状況において、自分たちの覚悟と責任とを試されなければならなくなる。何はともあれ、すべての鍵を握らされたのは伊集院である。たしかに彼の覚醒は、いくつもの場面を通じ、すでに明示的なものであったけれども、朝田の偉大なる庇護がほとんど及ばないなかに立ち、あるいは朝田という稀有の命運を委ねられることで、誰もが驚くまでの変容を遂げるのだ。霧島や国立、鬼頭やクレメンスといったエキスパートが、各人の限界と向き合わざるをえないのをコントラストにして、若き伊集院の著しい成長が具体化される、そして朝田の手術の行方は。ああ、そこに生じるドラマ、ドラマ、ドラマたるや、物語上の空間はとても狭く、息が詰まるぐらいなのに、圧倒的なスペクタクルが眼前に開かれている。
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医龍 霧島 コミック
Excerpt: 今週読んだ漫画雑誌ピックアップ雑感 ... ビッグコミックスペリオール 「医龍」 打つ手なしかと思われた霧島が大胆なプレゼン。 医療漫画なのに手術してないけど読み合いと駆け引きには目を見張るものがある..
Weblog: 医龍 坂口憲二 最新情報
Tracked: 2010-09-18 12:34