
『プリキュウ』の最富キョウスケによる短編集。ぜんぶで5つのマンガが収められているが、なかでもよかったのは、表題作にあたる「ペンギンプリンス」である。魔女顔であるばかりに、つねに第一印象のよくない勅使河原蘭子は、あるとき学校中の女子から王子様として慕われる村上隆治の、意外な一面を目撃してしまう。じつはヘタレなのに周囲の期待に応えようとする村上は、自分の弱点を知られてしまったことで、極度にうろたえるけれど、そんな彼に向かって蘭子は〈いいじゃん ペンギン王子 弱点のない奴なんか 底が知れてるよ〉と微笑むのであった。蘭子、男前である。燃えるな。いや、蘭子に限らず、ここに収録されているどれもが、基本的に、ハンサムなヒロインを扱っており、作者のコメントを借りるのであれば〈ちゃんと『ノリと気合』で乗り切ります!〉といったタイプの人物に造型されている。翻って、男子は、ツンデレっていう言葉の意味はよくわからないのであまり使いたくはないのだが、表面上は突っ張っているけれども、内心は弱気で、好きな子の前ではがらりと表情が変わり、甘える、そういった性格づけがなされており、男女両者の逆立ちしたコントラスが、スウィートな恋愛劇に、鮮やかな情緒を施している。
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