ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年03月24日
 自分の才能に気づくのは幸か不幸か、という問題があって、たとえ己の天賦に無自覚であったとしても幸福に生きるというのはありうる、逆に己の無能さを自覚してしまったばかりに不幸になるというのもありうる、だからまあ、才能だなんてそんなこと考えないほうが、と思うこともあるのだった。それはそれとして。神尾葉子『キャットストリート』の4巻である。子役としての挫折から立ち直れず、引きこもりになってしまった恵都は、フリー・スクールに通い出すことで、じょじょにかつての明るさを回復していった。子役のころ、自分を陥れた奈子の代役として、新人バンドのプロモーション・ビデオに参加させられることになった恵都は、しかし、その撮影現場で、与えられた役割をきっちりとこなし、いっとき輝きに満ちた表情を取り戻すのであった。たちまちその映像は評判となり、ざわめき出す周囲に、ようやく築き上げた友人たちとの関係が壊れてしまわないかを心配する、そんな恵都の耳に、フリー・スクール閉鎖の噂が聞えてくる。この巻では、わりと恋愛のモードがつよく打ち出されており、恵都と玲、浩一のトライアングルが、微妙に変形しはじめるのが、ひとつの見所であるわけだが、いやいや、ヤキモチを焼く玲と叶わぬ想いに傷つく浩一の姿が、とってもキュートだったりするのだけれども、その一方で、やはり恵都の成長ぶりが、大きな関心として物語を動かしている。さる高名な演出家から、長いブランクに関して、駄目出しをされた恵都は、遅れてやってきたプロ意識に、はじめて傷つく。〈昔は いつも 仕事は黙っていても向こうから来たから いらないっていわれたのはじめてだった〉からである。まだ、ふたたび役者をやるかどうかは決めていないが、とりあえず発声練習を開始する恵都の姿は、まちがいなく、再生への手がかりを映し出している。〈この短い舞台に立ちながら ひとつコードの抜けたテレビを思った〉〈赤白黄 どれが繋がらなくてもなにも映し出さない〉。みっつのコードのたとえは、僕には、自分が自分にしてあげられること、自分が他人にしてあげられること、そして他人が自分にしてくれること、そういった三点の交わりを意味しているように思えた。

 3巻についての文章→こちら
 1、2巻についての文章→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(06年)
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キャットストリート 神尾葉子
Excerpt: story元天才子役で、あることをきっかけに7年間不登校になったままの少女ケイトが元少年サッカー有望選手だった玲に誘われ、フリースクールに通い始め、世界が変わっていきます。point「花より男子」の神..
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Tracked: 2007-03-19 17:53
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