ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年06月18日
 NO MORE PAIN(初回限定盤)(DVD付) NO MORE PAIN

 期待と不安があった。しかし、期待と不安を秤にかければ、不安のほうに胸中は傾くようだった。シングルとして先行し、アルバムにも収録されることとなった「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」と「THE D-MOTION」の2曲はともかく、5人編成のままレコーディングされた「Going!」からは、KAT-TUNというグループが今後どこにどう進んでいこうとしているのか、確固たる方向性を掴むことができなかったためである。

 過去にも再三述べてきたとおり、08年のサード・アルバム『KAT-TUN III -QUEEN OF PIRATES-』は、掛け値なしの傑作であった。見事であるほどにゴージャスでグラマラスなポップとロックをすばらしくすばらしく聴かせてくれた。続く09年の『Break the Records -by you & for you-』は、個々の楽曲に良さはあったものの、トータルなコンセプトを望めば、その次のレベルを提示するには至れていなかったと思う。

 これがファンの贔屓目であるのか、あるいは厳しめの意見であるのかは知らない。だがすくなくとも、そのアーティストに一線級のポテンシャルが認められる以上、そのアーティストは彼らに魅了された人間をさらに魅了するだけの結果を残さなければいけない。プレッシャーはつねにあるだろうが、「Love yourself」と「THE D-MOTION」にあらわれていためくるめくハレーションからは、KAT-TUNならやり遂げるに違いない、という期待の二文字と手応えをたしかに受け取れた。反面、諸事情により状況が一転してしまったのは仕方なく、それを引き受けなければならなかった「Going!」の淡い色彩からは、とりあえず、の妥当性を上回るものを得られなかった。そこに不安が生じた。

 そしてついに登場したのが『NO MORE PAIИ』なのだけれども、いやまず先に結論をいってしまおう。KAT-TUNはやはり心強かった、と。

 フル・アルバムとしての性格を問えば、これもまたちょっと『KAT-TUN III -QUEEN OF PIRATES-』の内容には及ばない。『Break the Records -by you & for you-』と同様に、収録曲の半分近くをソロ・ナンバーで押さえた構成は、ある種のコンピレーションに近しいとさえいってよい。にもかかわらず、あらかじめ秤にかけられていた期待と不安の、不安をすこしずつ忘れさせてくれるような魅力が、個々の楽曲に備わっていて、最終的には、つまりそれが、この作品の特徴なんだと信じられる。

 冒頭の「N.M.P. (NO MORE PAIN)」に再現された過剰なエピックは、まさしくKAT-TUNというグループならではのものだ。大盤振る舞いのオーケストレーションが響き渡るなか、5人が歌い、紡いでゆくロマンティシズムの、激しく切ない印象に、おお、と思わず声が漏れる。なぜこんなにも浮き世離れしたサウンドが、ひたすらエモーショナルに届くのか。もはや、KAT-TUNだから、としかいいようがない。韻を凝らし、ふたたびKとAとTとTとUとNの六文字を刻んでいくJOKER(田中くん)のラップが最高潮に燃えるし、初回限定盤に付属されたミュージック・ヴィデオで確認できるように、クライマックスで〈Nooo Paaaaaaaaaaaaaain〉と苦悶を誇張する上田くんの叫びが、あまりにもドラマティックだから、むせ返る。

 要は、万全の掴みなのだ。いうまでもなくそれは、2曲目の「Love yourself」でキャッチーなポジションに切り替わるだろう。個人的なハイライトは、「FARAWAY」と名づけられた3曲目にあった。ゆったりとしたテンポにメロウなモードの揺らされるナンバーである。コーラスにおけるユニゾンがうつくしく、やさしく〈離れても・夜明けは・光を連れて来るから・涙をとかして・想い伝わるまで〉と歌う。この励ましに感動を誘われるだけであれば、あえて特筆はすまい。同じメロディが〈生き急ぐことさえ・君のためだと思ってた・もし世界の裏・離れても・途絶えない絆・感じて〉と繰り返すところに、刹那的な風景が描かれ、それがグループのイメージにぴったりと合い、じっさいメンバーの重ね合わせるヴォーカルは、どこまでもデリケートに、すぐにでも壊れそうな表情をのぞかせるので、目を離せなくなるかのように引き込まれる。

 次いでアッパーな「THE D-MOTION」が飛び出してくるわけだけれども、時間的な問題か、予算的な都合か、バンド・サウンドを意識した楽曲はすくなく、ほとんどが打ち込みのトラックを使っていることは、『NO MORE PAIИ』に一つの基調をつくり出しているようにも感じられる。先に、ある種のコンピレーションに近しい、と述べたのは、全体の統一性を踏まえてだが、それとはべつのレベルで、アルバムのトーンはバランス化されている。

 5曲目の「RIGHT NOW」などはまさしく、「THE D-MOTION」のあとに並んで違和感のないナンバーだといえる。中丸くんのヒューマン・ビートボックスにオートチューンをかけた変則的なアプローチのイントロを受け、電子音の響き、リズムのパターンが、たかたか、高鳴り出す。かつてはハード・ロックやスピード・メタルに描かれていた「俺」と「君」のレックレス・ライフが、ここではダンサブルなノリへと塗り替えられている。〈俺・MARIONETTE・君・MARIONETTE〉というフレーズは、この曲調でなければ、生きなかった。この曲調だからこそ、生き生きとしているのだ。6曲目の「ROCKIN' ALL NITE」は、ギターがじゃきじゃき轟いてはいるものの、アグレッシヴに攻めるのではなく、いかにもジャニーズ様式の、楽しげなパーティー・チューンに仕上がっている。どこか初期のKAT-TUNを彷彿とさせるのも、そのせいだろう。

 あいだに「Going!」を挟み、8曲目の「SWEET」からソロ・ナンバーのコーナーに入っていくのだが、「ROCKIN' ALL NITE」の流れで「Going!」とくるのは、いささか爽やかすぎるぜ、なのであって、しかしアルバムの単位で前後の仕切りを考えたさい、「Going!」の軽快なタッチが、さほど悪くない。スイッチを切り替えるのにちょうど適している。アクセントだ。

 さて。意外といってはあれだけれど、各自のソロ・ナンバーがなかなかに充実しているのは『NO MORE PAIИ』の良所ではないか、と思う。亀梨くんの「SWEET」は、タイトルどおりの甘やかなラヴ・ストーリーをアーバンなポップスに込める。そりゃあ前作に収録されていた「1582」のてんこ盛りなギミックと比べたら、派手さはない。とはいえ、しっとりとしたムードにあってさえ、力んで震えて掠れそうな声に、亀梨和也という色気はたっぷり詰まっている。田口くんの「LOVE MUSIC」は、とてもチャーミングだ。じつは「FARAWAY」でも思ったのだが、このところ、田口くんのヴォーカルが侮れねえ。総じてヴァリエーションが豊かになったというか。きらきらとした音色の「LOVE MUSIC」では、テンションに抑揚を効かせ、ほがらかなシーンに彩りを加えながら、ついには自作のラップまで飛び出す。

 それにしても、だ。田中くんの「MAKE U WET -CHAPTER 2-」が、サウンドにしても歌詞にしてもエロティックすぎる。SEを含め、かなり直接的に卑猥にセックスを題材にしていて、照れる。まったく〈淫らウサギちゃん〉じゃないし〈汚れたウサギちゃん〉じゃないよ。〈FACE TO FACE?〉か〈DOGGY STYLE?〉かって問われても、弱る。ともあれ、ひさしくラウドなヘヴィ・ロックのスタイルが定着していた田中くんであるが、「Going!」のシングルに収録されていた「I DON'T MISS U」よりこちら、じょじょにブラック・ミュージック寄りのセンスを発揮しつつあるみたいだ。

 8曲目の「RABBIT OR WOLF?」は、先般の公開リハーサルで耳にして以来、ずっと気にかかっていた上田くんのソロ・ナンバーで、じっくりあらためてみても、やっぱり、これ、好き。端的にいってしまえば、RADWIMPSあたりがロール・モデルであるふうなミクスチャーを、よりファンキッシュな演奏に合わせてやっている。世界規模のメタファーにナルシスティックな情緒の入り混じったさまが、直感的なカタルシスをもたらしている点に今日性がうかがえる一方、メロディを性急に滑らせていった先のスリルが、何よりもつよいフックとなっているところに、この歌い手がすでに「BUTTERFLY」というナンバーをモノにしていたことを思い出す。

 はたして中丸くんのヴォーカルが、『NO MORE PAIИ』というアルバムにとって、どれだけ重要な役割を担っているか、これはもう随所で認識されるとおりだろう。くどいようだけれど、ここでまた「FARAWAY」を挙げてもよい。いっけん線は細いながら、前に出ても後ろに引いても、安定したスタンスで楽曲の盛り上がりを支える。だいたい、ビートボックスの技にしたってそうだし、本質的に器用なのである。シンガーとしては達者なのだ。12曲目の「FILM」では、その達者な面が、センチメンタルな叙情をぱあっと輝かせている。

 5人が5人、それぞれの素振りで鮮やかにしてきたカラーは、ラストを飾る「PROMISE SONG」に統合される。歌詞のなかで「FARAWAY」という祈りが反復される。まあファンにしてみれば、これ、絶対にコンサートの本編でもエンディングにかかるよね、的な予定調和のバラードなのだが、旋律自体にはそれに見合うだけの感動が用意されているので、時と場合によっては、ついつい、ほろっときてしまいそう。通常盤には「HELLO」というナンバーが、ボーナス・トラックで、最後に加えられている。ハンド・クラップ、ストンプ調のリズム、扇情的な掛け声、のいずれもが勇ましく。〈突き上げろRAISE YOUR HANDS! 煽って・もっと・もっと・規制・蹴り上げりゃHOLD ON YOU!〉なのであって、「PROMISE SONG」とは別種の余韻を味わえる。できるかぎりのことが費やされたアルバムだ。

 赤西仁の不在は、不在として、間違いなく、ある。それは必然、活動の単位で、楽曲の単位で、いくつかの展開を左右しているのだろう。しかし、たとえ今は6人が5人であろうともKAT-TUNはKAT-TUNにほかならないのであって、その心強さは消せない。すくなくとも『NO MORE PAIИ』は、それを証明してみせた。マスター・ピースになりえるとは決していうまい。だが、上記した理由において、全幅の信頼を寄せたい。

・その他KAT-TUNに関する文章
 「Going!」について→こちら
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら

・その他赤西仁、LANDSに関する文章
 『Olympus』について→こちら
 「BANDAGE」について→こちら

 コンサート『赤西仁 Star Live 友&仁 You&Jin』(2010年2月8日・日生劇場)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2010年)
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