ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年03月22日
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 『週間少年ジャンプ』第15号(3月27日号)掲載の読み切り。えーっと、今週号ではなくて、先週号に載っていた作品です。最近の『ジャンプ』の新人さんは、どうも僕の不得手なタイプが多く、あまり注意してみないため、今ごろになって読んだ。そしたら、いや、これがけっこうヒットだったのである。たぶん、すこしばかりスクライド成分が含まれているみたいな感じがする、というのもある。村中孝『蟲人間 INSECTOR』は、その筋を大まかに取り出せば、次のような話になる。

 主人公である暗夜甲虫(あんやこうむ)は、家庭の事情により引っ越しを繰り返していたため、なかなか友達というものを持てずにいた。また友達ができにくい理由は他にもある。その体躯が人並み外れて巨大なため、周りの人間からは、はからずも凶暴な奴だと思われてしまうのだ。どうしても友達の欲しい彼は、新しい転校先の高校で、必死になってみんなに愛想を振りまくのだが、そこでひとりの、暗い表情の少女と出会う。彼女は、〈人間なのに虫の様な特徴とその能力を持ち人を殺す危ない能力者らしい〉と噂される蟲人間からストーカーの被害に遭っていた。彼女と親しくなった人間は、みんな蟲人間によって傷つけられる、そのために彼女に近づくものはなくて、ひとり孤独な学園生活を送る。暗夜甲虫は、そんな彼女の姿を見、救ってやりたいと思うのであった。

 ネタを割ってしまえば、じつはストーカーをしていたのは蟲人間を装っていた偽物で、暗夜甲虫こそが〈ああそーだ オレは確かに化物・・・お陰で誰も友達いねーよ!!〉〈子供の頃から不思議だったよ 何で俺は皆と違うのかって〉〈でも今ならわかるぜ!! 俺の力はお前のような奴から友達を助ける為に〉〈あったんだってな!!〉といった具合に、熱血で心の優しい蟲人間だったのだ。まあ、そういったストーリーの展開はともかく、台詞回しや、あと絵柄のダイナミックさ加減が、なかなかに燃えで、良い感じなのである。

 それから、ひとつポイントを挙げるとしたならば、たとえば〈犯罪者と同じよ 異質な存在でありながら 普段は社会に溶け込み 普通に暮らしている〉という、まあ偏っているといえなくもない言葉に、おそらくは作者の無意識が現れているように、このマンガにおいては、善と悪とが、完全に二項として分離されているところであろう。結果、善と悪が、主体のなかで、綱引きを起こしていない。それこそ『ブリーチ』や『NARUTO』の連載分をみてみればわかるのだけれども、主体がふたつに引き裂かれるような表現が、いま現在の少年マンガの主流だとして、ポジティヴな意志のちゃんとひとつに固まっているこれは、読み切りだからといった部分を差し引いても、けっこうレアなケースではないか、と思う。

 もちろん、その点をもって、勧善懲悪のパターンだと判じ、アクチュアルさの欠如を断じることはできるが、いやいや、僕などは、こういう時代だからこそ逆に、これぐらいのガッツと思い遣りに突き抜けていたほうが、どこか信じられる気がするのだった。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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