ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年06月03日
 こと『トンデモマンガの世界2』に関して、トンデモという形容は、要するに、マイナーな作品を指しているにすぎず、紹介されているものを見るなら、作家そのものがマイナーな作品、メジャーな作家のマイナーな作品、ジャンル自体がマイナーな作品、の大きく三通りに分類されるだろう。

 何はともあれ、川野ゆーへーの『スリラー』が取り上げられているのは、うれしかった。ほんらいはギャグ・マンガ家であったはずの川野が、シリアスなストーリーに挑み、『月刊少年チャンピオン』に連載しながらも、ほとんど未完に近しい状態のまま、終盤が単行本化されなかった作品である。新田五郎が書くテキストのなかで〈本作は超能力と超能力者に作品内だけで通用する新造語を付けた点が、「ジョジョっぽいマンガ」だと言える〉とされているとおり、たしかにそのような雰囲気を持ってはいたし、作中人物の理念が直接的に言動化されているあたりからも、そうしたニュアンスのうかがえたマンガではあったが、しかし一方で〈本作が興味深いのは「木下」という、名前は平凡、デブでブサイク、性格最悪という敵キャラが、てっきり雑魚キャラかと思ったらなかなかやられずにしぶとく出続けるところ〉といわれているように、その、外見と役割が一致しないほどにインパクトのあるヒールと、態度は潔いもののじつは並み程度のポテンシャルしか持たない主人公とが、まるでそれぞれの全存在をかけるかのごとく、死闘を繰り広げていくさまが、タイトルに偽りなしの正しくスリルとなっていて、最高潮に燃えた。個人的には、トンデモである以上に、隠れた秀作と見なしたい。

 さてしかし、この『トンデモマンガの世界2』で、自分の関心領域と密接なため、もっとも興味深く読んだのは、やはり新田五郎が担当しているのだけれども、司敬(現・マンガ原作者の倉科遼)の『学ラン維新伝 竜馬翔る』や、熊野一真(原作)と松元出樹(漫画)の『電光! 武闘派倶楽部』、向上輝の『ガリベン番長』など、対決形式のバトルで描かれた学園ものを扱った箇所だった。とくに『電光! 武闘派倶楽部』について、〈学園もののマンガやドラマでは、「生徒同士がさまざまな理由で戦う」という設定のものが1980年代に多く作られ〉ていて、〈本作『電光! 武闘派倶楽部』もそうした流れの中で描かれた作品である〉ため、〈同時代的にはそれほど斬新なアイディアではない〉とし、さらには『ガリベン番長』の項で、〈「学校の勉強で上位になることこそ至上の価値」という考えや、「文武両道を求め、庶民を支配しようとするエリート層の育成」という悪役像は、やはり近い年に描かれた『電光! 武闘派倶楽部』と酷似してい〉て、〈当時、こうした悪役は多くの作品に登場する一種の典型だった〉のは、〈おそらく、1970年代半ばから1990年代初めまでが大衆社会に疑問が投げかけられた時期だったことや、戦前からの支配層が今でも影響力を持つという陰謀論的な認識が人々の間にあったこと関係しているのだろう〉と見ている点であり、他方で『学ラン維新伝 竜馬翔る』に架空戦記のイメージを指摘していることである。

 いわゆるヤンキー・マンガ(その起こりは80年代に暫定できるだろう)以前の、不良や番長、ガクランをベースにしたマンガ(つまりは70年代から90年代にかけ、多く発表されていたもの)の研究は、膨大な作品数のわりに、ほとんど進んでいないのが現状で、正直なところをいえば、もっと幅広に込み入った考察が欲しかった気もしないではない(まあそれはそれで本書のテーマとは違ってしまうから仕方がない)のだが、歴史的な要約としては、なかなか納得のいく内容になっている。

 ところで、この本の最後に置かれた山本弘の「あとがき」である。例の「非実在青少年」問題にあてられているのだけれど、もしも日本で他国と同様の規制が敷かれたら〈18歳未満のキャラクターのエロチックなシーンが、今のアニメやマンガやゲームの中に、どれほど多くあることか。それらが全滅するのである!〉そして〈マンガやアニメやゲームは日本の誇る文化なのだ。そして、その業界の多くの部分はエロによって支えられているのだ。エロを禁止したら業界全体が衰退する〉のだと、否定派を主張するその論調はいささか単純に走りすぎ、あまりよい文章とは思われない。

 『トンデモマンガの世界』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(2010年)
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