
95年のデビューよりこちら、グランジやアメリカン・オルタナティヴ、モダンなヘヴィネス以降のミクスチャー・ロックを起点としたバンド群において、DEFTONESが傑出したグループであり続けているのは疑いようがないのだったが、00年のサード・アルバム『WHITE PONY』によって作り上げてしまった巨大なピークを、他のアーティストのみならず、彼ら自身が越えられずにいるのもまた事実であった。すくなくとも03年の『DEFTONES』と06年の『SATURDAY NIGHT WRIST』に関しては、方向性の豊かさを高く買うことができたものの、『WHITE PONY』の印象を上書きするまでのインパクトは得られていなかったと思う。さてはたして、通算6枚目となるフル・アルバム『DIAMOND EYES』はどうか。まさしくDEFTONESの新作と認めるのに十分な質の内容である。さすがではある。しかしながらディスコグラフィに並べられたさい、頭を一つ抜けていくかといえば、そうはいかない。まあ、すぐれたレベルの作品が提出されている以上、このへんはもはや、トップ・ブランドならではの困難と見なすべきなのだろう、であって、凡百のクラスがいかにふんばっても届けない域に在ることだけは間違いない。ひとまず、今作に関しての大きな特徴を述べるなら、オリジナル・メンバーのチ・チェンが意識不明の重体から回復せず、代役を立てているため当然ではあるのだが、ベース・ラインの組み立てが以前までとは決定的に異なっていることだ。元QUICKSANDのセルジオ・ベガのそれは、かつてよりもメロディアスなグルーヴを強調的にしていて、もしも新機軸と呼ぶに相応しい点があるとしたら、あんがいそこになるのかもしれない。このことはたとえば、2曲目の「ROYAL」や3曲目の「CMND / CNTRL」など、アグレッシヴなアプローチのなかに美しさを灯したナンバーの、リズム・セクションにおいてとくにあきらかであるし、タイトル・トラックにあたる1曲目の「DIAMOND EYES」や6曲目の「ROCKET SKATES」など、重量感のたっぷりな扇情性がじつに、らしい、と感じられるナンバーにも、やわらかなセンセーションを与えている。また、5曲目の「BEAUTY SCHOOL」や8曲目の「SEXTAPE」のような、テンションの高まりを極力抑え、スタティックに展開する楽曲が、過去になく際立っているのも、『DIAMOND EYES』の魅力となっており、おそらく、ライヴの場面では、ヴォーカルのチノ・モレノがギターを携えて歌うモードなのだと推測されるその、美しくも儚げな叙情に、浸る。
・その他DEFTONESに関する文章
『SATURDAY NIGHT WRIST』について→こちら
『B-SIDES & RARITIES』について→こちら
06年8月10日の公演について→こちら
バンドのオフィシャル・サイト→こちら