ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年05月13日
 Going!(初回限定盤1)(DVD付) Going!(初回限定盤2) Going!

 聴けよ。ああ〈死んでねぇだけ「生きろ」今だろ?〉というメッセージの堂々たるや。

 6人のKAT-TUNが真のKAT-TUNである以上、5人のKAT-TUNは引き算にしかなれない、とは以前にも書いたのだったが、しかしそのマイナスが、すべての希望を無制限に飲み込んでしまうブラック・ホールではなく、より多くの幸運と新しいステップを彼らに与えるためのハンデになってくれればいいな、と思う。

 このような願いははたして、赤西仁抜きで制作された通算12枚目のシングル「Going!」によって叶えられたか。正直なところをいえば、こちらの胸に微妙なしこりを残す。いかんせん、前シングルである「Love yourself 」の切り拓いた地平は広く、そこで得られた興奮が大きすぎた。野心味に溢れたポップ・チューンであると同時にハイ・ポテンシャルなダンス・ナンバーでもあったあれと比べるなら、アイドルに用意された楽曲として保守的な路線にも感じられるし、つまりはKAT-TUNというグループのイメージが音楽性に再現されていこうとするとき、羽目外し、はからずも孕んでしまう個性と魅力とが、体よくまとめられたスタイルのなかに乏しい。

 作曲に「YOU」のSakoshin、そしてジャニーズ周りではスウェーデンの作曲チームと組むことが多い周水(Shusui)、編曲には嵐との仕事で知られ、「Love yourself」を担当した吉岡たく(Taku Yoshioka)を迎えた布陣は、万全なものといえただろう。だが残念ながら猛烈なケミストリーだけが起きなかったといわざるをえない。私見を述べれば、ある種の行儀よさ、やたらマイルドなテイストはおそらく周水の持ち込んだものであり、彼を加えずにSakosinのソング・ライティングを吉岡がアレンジしたならば、また違ったアプローチになったのではないか、と感じられる。

 しかしながらまったく特筆すべき点がないわけではない。かねてより、赤西くんを欠いたKAT-TUNにとっては田中くん(JOKER)こそがキー・マンである、という推測を個人的に持っているのだけれども、それはたしかにラップ・パートのふんばり、最重要なフックとして躍動する個所を得、実証されているのだった。これまでの(『マブ論』でライムスターの宇多丸がいっていた言葉を借りて述べるなら)ジブラばりのサグさを抑えめ、クレバの柔軟さを少しばかり学んだかのような押韻は、ともすれば爽やかさの重視が引っかかりの弱さへと通じてしまうタイプの楽曲において、もっともでかいカタルシスとなりえているのである。

 さしあたり(一時的にではあれ)体制を違えてしまったKAT-TUNがあげるべき狼煙に「Going!」が相応しいかどうかの判断をつけにくいのは、新境地というよりも安全策に受け取られかねない作風が、引き算の公式を打ち破れていないからであって、曲調はまったく違えども、やはり赤西くんの離脱を受けてリリースされた「僕らの街で」が、ソング・ライティングのレベルとはべつに、複雑な気持ちを抱かせたことを思い出させる。

 つまりはグループが有しているカラーの問題なのであった。KAT-TUNならではの色、色合い、それはしかし、通常盤の2曲目に収録された「FALL DOWN」で、たとえ6人が5人になろうとも、しっかり発せられている。

 欧米のモダンなラウド・ミュージックをJポップのラインにカスタマイズしてきたかのような「FALL DOWN」は、そもそもこのグループがミクスチャー・ロックのアプローチとひじょうに親和性の高かったことを、ふたたびあきらかにしている。そしてここで、正しくキー・マンたる役割を果たしているのが、田中聖であることは疑いようがない。過去には「PARASITE」や「PIERROT」などのソロ・ナンバーで、同様のアイディアを実践していたのが田中くんではあるが、そこで得られた成果を、今度は5人編成のコンビネーションに応用、敷衍化することで、これぞKAT-TUNだというテンションをまざまざ実現してみせている。

 グループの単位でいうなら、たとえば「LIPS」で試みられたスピード・メタルとは決定的に違う、もしかすれば「愛のコマンド」や「MOON」のヘヴィ・ロックに近しく、その延長線上にあるのかもしれないが、若さを盾にした勢いは初期の「SHE SAID...」さえも彷彿とさせる。いずれにせよ、そうした先行例に比して田中くんのラップ・パートはアグレッシヴなぐらいに前面化されている、このことが「FALL DOWN」に、日本のアイドルに与えられたそれとしては、破格なまでのインパクトをもたらしているのだ。

 冒頭に引いた〈死んでねぇだけ「生きろ」今だろ?〉というフレーズは、JOKER(田中くん)が「FALL DOWN」のラップ・パートにあてた自作詞なのだけれど、こういったクリシェを今どき、照れず、冷めず、茶化さず、まっとうな熱量に変えられているその正直さは讃えられてよいし、〈One who was wearing the lousty trousers was me. 'N who was drunken by the Sex Pistols and the bottle of whisky was me〉という英語詞にうかがえるバッド・ボーイズ、ロック・スターへの憧憬こそが、メロディアスなヴォーカルと対を為しながら吐き出される言葉群に、刹那的なエネルギーを召喚しているのは間違いない。

 ところで、こうした激しめのナンバーで亀梨くんが力むのを耳にするたび、いつだったか彼が何かのラジオ番組で、カラオケに行ったらNIRVANAやSLIPKNOTを歌う、とコメントしていたのを思い返し、微笑ましい気持ちになるのだったが、それはともかく、「ONE ON ONE」の頃より、田中くんのラップといえば、中丸くんのヒューマン・ビートボックスであって、「FALL DOWN」を盛り上げているもう一つの黄金律はそれだろう。

 中盤、ギターのソロを向こうに回し、先ほど挙げた〈One who was……〉という田中くんのアジテーションに絡んでいき、双方のアクセントをさらに深くするスクラッチのノイズを聴かれたい(カラオケのヴァージョンではオミットされていることからも中丸くんのビートボックスであることが察せられる)。とくに、これはほかのナンバーにもいえることなのだが、メタリックなギターとヒューマン・ビートボックスの相性が音楽面の特徴となっているアーティストは世界的にレアなのではないかと思うし、中丸くんの卓抜したスキルがそれを可能にしている点は指摘しておきたい。

 あまりにも長くなったのでとりいそぎ、初回限定盤の2に田中くんのソロ・ナンバーである「I DON'T MISS U」と中丸くんのソロ・ナンバーである「Answer」が収められることになったのは、上記したとおり現在の編成にあって貴重な役割を負っている2人なだけに興味深い。

 どちらもメロウな仕上がりのラヴ・ソングではあるものの、それぞれの資質が異なったかたちで反映されていて、「I DON'T MISS U」のミステリアスな響き、メロディをともないながら〈君はlike a 頭 かき回すMuddler〉であり〈忘れたい君の思い出はSyndrome〉なので〈DJ巻き戻せ出会いのIntro〉とラップされるフレーズのセンスは、じつに田中くんらしいし、しびれるし、澄み渡った情緒の「Answer」では、中丸くんのやわらかな歌声が、せつなさの影にあたたかな励ましをつくる。〈雨の中 夜の中〉と〈遠くまで 遠くまで〉と続いていくリフレインが、とてもやさしい。

 ・その他KAT-TUNに関する文章
 「Love yourself 〜君が嫌いな君が好き〜」について→こちら
 『Break the Records -by you & for you-』について→こちら
 「RESCUE」について→こちら
 「ONE DROP」について→こちら
 「White X'mas」について→こちら
 『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
 「DON’T U EVER STOP」について→こちら
 「LIPS」について→こちら
 「喜びの歌」について→こちら
 『Cartoon KAT-TUN II You』について→こちら
 『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
 「REAL FACE」について→こちら

 DVD『KAT-TUN LIVE Break the Records』について→こちら
 DVD『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』について→こちら

 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2010 公開リハーサル』(4月28日・さいたまスーパーアリーナ)について→こちら
 コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
  6月15日の公演について→こちら
  5月22日の公演について→こちら
  5月18日の公演について→こちら 
 コンサート『KAT-TUN LIVE TOUR 2008 QUEEN OF PIRATES』(08年8月5日・東京ドーム)について→こちら

・その他赤西仁、LANDSに関する文章
 『Olympus』について→こちら
 「BANDAGE」について→こちら

 コンサート『赤西仁 Star Live 友&仁 You&Jin』(2010年2月8日・日生劇場)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(2) | 音楽(2010年)
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