ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年05月06日
 蒼太の包丁 24 (マンサンコミックス)

 料理マンガの系には長期連載化するものが少なくはないが、時間の流れをうまく掴み、丁寧に描けているものほど、物語の魅力に富む。たとえば、現在それに成功しているケースとして『蒼太の包丁』を挙げられる。この24巻には、主人公の将来に関し、大事件となるようなエピソードはないのだけれど、しかし細かいところで作中人物たちの変化や成長が押さえられているため、積み重ねられてきた過去に自然と想いを馳せる、そして今後の展開にも興味をそそられるのだった。蒼太の恋愛はじつにスローリーである。他の職人との関係もそうなのだが、決定的なモーメントはなかなか訪れない。だがそのじれったさのなかにこそ、心情の深みがよく出、ああこのように微妙なニュアンスを一つ一つ汲み取っていく日々が、人生であり、生活であるのかもしれないな、と、多少大げさにいえば、思わされる。たとえば、ついに自分の店を持ったはいいが、オープン早々ピンチに陥った花ノ井に、「富み久」の親方や蒼太が自分なりの手助けを与えるくだりなど、筋書き自体は定型のパターンではあるものの、それぞれの性格と今までのストーリーを踏まえたうえでの構成が妙でいて、ダイナミックな引きはないかわり、ページ毎に小さな読み応えが生まれている。しかしてその、小さな読み応えのひじょうに侮れないのが、『蒼太の包丁』というマンガの魅力でもある。また、泉田や坂口といった「富み久」の常連たち、ワキの人々がじょじょに存在感を大きくしているのも、新たな楽しみとなりつつあるのだが、蒼太に目をつけた金持ちの嬢ちゃん、真知のもたらすアクセントもよい。それにしても蒼太の野郎もてやがんな。たとえ好いた相手ではなかろうとも、そりゃあ〈雑魚とは違うの…あなたは特別な人 なんたってこの私が認めた男なんだから〉と言われたならば、はっとすらあ。

 22巻について→こちら
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