ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年03月15日
 さんさん録 1 (1)

 あはは。おもしろい、というか、ゆかい、というか、ああ、そうか、たぶん、愛嬌がある、というのが、いちばんしっくりとくるかな。こうの史代の『さんさん録』がいいのは、なにはともあれ登場人物たちが、生き生きとしているところであろう。伊藤剛がいうところの「キャラ」「キャラクター」の区別でいったらどっちになるのかはわからないけれども、そのアクションとリアクションの数々に、思わず、顔が綻んでしまうのだった。〈妻が突然逝ってしまった〉。あとに残された参平(参さん)は、息子夫婦と同居することになるのだが、その性格のためか、孫の乃菜からは〈ぼけかけてるって本当か?〉と言われる始末である。あるとき荷物を整理していたら、いまは亡き妻(おつう)が書き留めた、一冊のノートが出てきた。そこに記されている生活作法をもとに、参平は、できうるかぎり家庭に貢献しようと、奮闘しては、失敗する、そんな日々が描かれている。ふつう、こういう話であれば、幸せ家族ばんざい、みたいな典型に陥ってしまいそうな気もするのだけれども、そうはなっていない。先ほどもいったが、登場人物たちの在り方が、じつにナイスで、魅力的なのであり、そのことが、なかなか他に類をみない、にぎやかな笑いのうちに、ハート・ウォーミングな雰囲気をつくりだしてゆく。たとえば、参平をして〈わが孫ながらほんとにうすきみわるいガキだな〉と思われてしまう乃菜などは、その可愛くない表情や行動のいちいちに、くすり、とさせられてしまう。昆虫好きの彼女は、感謝のしるしに、〈じいちゃん……まるむしあげようか〉という。いや、いらねえだろ。この乃菜と参平のコンビネーションが、ほんとうに抜群なのである。買い物に出かけたさいなども、お互いに意思疎通がはかれてなくてねえ。あと、息子(詩郎)の仕事関係で知り合った仙川さんと参平のやりとりも、楽しい。グーで男を殴る女性というのは、だいたいキュートなものである。そのようにして綴られているのは、じつは年齢や性別にかかわる、ある種のコミュニケーション・ギャップなのだが、しかし、それがシリアスにではなくて、あくまでもユーモラスに展開されている点が、ときおり顔を出す、心に触れるような、鮮やかな情景を際立てるかっこうになっている。

 『夕凪の街 桜の国』についての文章→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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