ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年04月21日
 ヤングチャンピオン烈No.5 2010年 5/30号 [雑誌]

 うんうん、吉沢潤一の本領はやっぱりこういう感じだいね、と思わず納得させられてしまう。こういう、とは、どういう、のか。言葉にして説明するのはなかなか難しいのだったが、たぶん、まじとギャグの二分法でマンガを考えようとしたとき、いっけんそのパースペクティヴが狂っているふうでありながらも、じつはそれが時代にそった感性になりえている(かもしれない)ので、作品自体に普遍であるのとはまた異なった魅力、とりあえずの定義化を無効とするようなインパクトが備わっている点を指したい。さてこの『乙女シンク』は『ヤングチャンピオン烈』NO.5に掲載された読み切りであり、『ヤングチャンピオン』の本誌で連載されている『足利アナーキー』の外伝ということになっている。物語の舞台は本編と一緒、『足利アナーキー』の主人公であるハルキとカザマサが通う栃木県立南総合高校で、彼らに憧れる一学年下の女子高生たち、ユン、マキコ、ランの、ヤンキイッシュでポップな青春の一コマが切り取られている。ストーリーはひじょうに簡素である。ユンとマキコとランは、友人のよぅちゃんを妊娠させたにもかかわらず、素知らぬ顔で学校にやってきた同級生、松本をこらしめるべく、武装し、夜道の襲撃を果たすのであった。ほんとうにたったそれだけのことでしかない。だがそれだけのことがとてもチャーミングな印象を持っているのは、たとえば、今どき地方都市でギャルのセンスに寄っていく高校生の指向、リアリティがよく掴めている、そう単純に述べてみせるのが正しいかどうか、当事者じゃない人間にはわかれないのだけれども、自分なりの解釈が許されるとすれば、おそらくは、半径の狭い世界を眼前に自分たちのプライオリティがどこに置かれるべきか、少なくともそのことをはっきりさせながら生きている若者の強さ、あるいは素直さが、できうるかぎり肯定の姿形で描かれている、これがはっとするほどの勢いを内容につけさせている。欲望も友情も恋愛も、三人のヒロインにとって大切だと信じられているものをまったく批判しない、たとえ軽さやちゃらさに勘繰られようとも、否定をしりぞけることにより、作中の世界、人物の表情を、彩りあざやかにしているのだ。彼女たちが保健室のベッドで横になり、ファッション誌を眺め、他愛のない言葉を交わすうち、寝入ってしまう、そのシーンの日常感たるや、良い良い。

 『足利アナーキー』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
  1話目について→こちら

・その他吉沢潤一に関する文章
 「ボーイミーツガール」について→こちら
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