ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年04月03日
 サンクチュアリ-THE幕狼異新 1 (ジャンプコミックスデラックス)

 野口賢、冲方丁の原作を得、新選組を描く。とはいえ、この『サンクチュアリ -THE幕狼異新-』の1巻において特徴的なのは、近作を経て、いよいよ個性となりつつある野口式のサイキック・バトルが、幕末を舞台に全開させられていることだろう。すなわち現在の段階では、冲方の貢献は、物語のレベルではなく、設定のレベルに大きい。新選組とは。と、わざわざ説明する必要はないと思うが、ここでのそれは、近藤勇の遺命を土方歳三と沖田総司が引き継ぎ、是が非でも存続させようとするものとして描かれている。すなわち近藤はすでに死んでいる。しかも池田屋の事件で命を落としたことになっている。かくして史実の改変が施されているのだけれど、新選組のなかで近藤の不在を承知しているのは土方と沖田のみであって、影武者のごとく幻術で近藤勇(いさみ)を演じるのが、深雪太夫という謎めいた妖女である。その、土方、沖田、美雪太夫、の三名が、近藤によって託された美意識を象徴的に指していうのが、つまり「聖域(サンクチュアリ」なのであり、なるほどタイトルもそこに由来しているわけだ。しかし先ほども述べたとおり、作中で展開されるサイキック・バトルのはったりこそが、最大のフック、新選組に加わった隊士たちの壮絶な生き様をもっともよく伝えてくるものになっている。野口は過去作の『BE TAKUTO!!』で、車田正美のマンガの一節を引いていたことがあったが、荒唐無稽なサイキック・バトルが野郎の信念をダイレクトに代弁するかのようなスタイルは、車田のそれに近しい。異能の力を使い、異能の力を持った敵と攻防する、そういう新選組隊士たちの姿は、まるで『風魔の小次郎』の戦士たちを思わせる。細かい点はさしあたり抜きにしたっていい。土方と沖田はもちろん、斎藤一や島田魁、井上源三郎らが、超常的な決戦を繰り広げることに燃えられたなら、じつにしめたものである。

・その他野口賢に関する文章
 『狗ハンティング』(原作・夢枕獏 / 構成・子安秀明)
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『KUROZUKA -黒塚-』(原作・夢枕獏)
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
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