ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年03月02日
 sinzinn.jpg
 
 『週間少年チャンピオン』NO.14(3月16日)号掲載の読み切り。ある朝、主人公が学校に行くと、彼の机の上には花瓶が置いてあった。ひどい悪戯だと思い、クラスメイトたちに詰め寄るが、しかし無視されるばかりであった。〈みんなにはあなたは見えないの あなたは別のクラスになりました〉、見知らぬ少女に案内され入った教室で、編入生として、教師から次のような説明を受ける。〈お前は死んだ ここの奴らは皆……死んだ奴らだ 全国から集まって来た 死んでも死にきれねえ……幽霊になっちまった中学生だな ここは…そのクラスなのさ……〉。生前にやり残した何か、それをやり遂げられれば、無事成仏できるというが、主人公には、自分がいったい何をやり残したのか、まったく思い出すことができない。絵の雰囲気と話の筋からいって、さいしょ『サスペリア』あたりから引っ張ってきたマンガ家なのかと思ったが、ちがった。梅田阿比は、第65回新人まんが賞受賞者で、この『幽刻幻談−ぼくらのサイン−』は、その受賞作にあたる。死者をモチーフにした青春劇というのは、まあ珍しいものではないけれど、それにしてもけっこう引き込まれる内容だった。物語のポイントは、死者と生者との交流ではなくて、あくまでも死者と死者同士の交流に置かれている。生者のストーリーへの介入は、霊能力者による攻撃といった一点でのみ行われているが、それというのはつまり、主人公のいる位置からすると、外部からの侵入に他ならない。要するに、ここでは死者という存在を用い、物語を、現実の世界から隔離することで、ひとつのアレゴリカルな空間が作り上げられているのである。そのなかにあっては、リアリティに則した懐疑は無効化される。そのように、主人公が幽霊だということの意味合いは、ファンタジーのうちにやがてある種の普遍性を導いてゆく、といった成果をあげている。あるいは、ここで繰り広げられる、優等生的な純粋さというのは、もはや現実の世界を舞台にしては成り立たないものなのかもしれない。総体的にみれば、たしかに拙いところもあるが、結末の爽やかな印象が、読後を鮮やかに塗り替えた。梅田は、次号より早速『人形師いろは』という連載を開始するらしいが、そちらも今から楽しみである。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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