ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年01月26日
 足利アナーキー 2 (ヤングチャンピオンコミックス)

 以前にも記したとおり、近年、ヤンキー・マンガ(より広くいうならば不良マンガ)の系は、その総数を伸ばし、以前にも増してジャンルに勢いをつけつつあるわけだが、2010年代のヤンキー・マンガについて、さしあたり目を凝らしておきたいのは、やはり、この『足利アナーキー』の吉沢潤一や『クローバー』の平川哲弘、『ランチキ』の奥嶋ひろまさ、『A-BOUT!』の市川マサといった若い世代の台頭になるだろう。彼らの大半が1980年以降の生まれであることはつまり、70年代、80年代当時に育まれていた不良文化の土壌を正しく共有していないことを意味する。言い換えるとしたら、ノスタルジックなリアリティ、文脈では必ずしも括れない。作風にしても一世代上との違いを見せはじめているだろう。このジャンルにおける70年代生まれの作家の多くが、高橋ヒロシやハロルド作石、井上雄彦などのタッチをベースに、そうした直接の影響元や参照先を隠しきれないのに対し、もうワン・クッションなりツー・クッションなりの要素がミックスされていて、一概には誰彼のフォロワーとは判じられないところにきていると思われるのだ。必然、そのことは作品を構成するロジックや物語に内包される倫理にも及んでいるといってよい。詳しくはべつの機会に譲るけれども、端的に見て、暴力の使い途一つとってもひじょうにカジュアルな感性によっており、刹那的なアトラクションが表現の優位に立っている印象を受ける。もちろん、それは作者の若さに負っているのかもしれないし、結果的に良いとか悪いの問題はさておき、たしかな変移(変異)が、わずかでしかないとしても、あらわれている点は気に留めておかれたい、というのも以前に記したことがあったな。

 何はともあれ、『足利アナーキー』の2巻だが、やはり、刹那的なアトラクションを満載にしながら、ローを知らないテンションでがんがん攻めているところが、このマンガの本領にほかならないよね。まじとギャグの境目に引っ張られたロープを、勢い任せ、ぎりぎりのステップで渡り、どちらに転がり落ちても損なわれてしまいそうな破天荒さ、無闇やたらにアップするヴォルテージにこそ、最大の魅力を覚えるのだった。たとえば、90年代に『谷仮面』というヤンキー・マンガのオルタナティヴであるような位置からキャリアをスタートさせた柴田ヨクサルの作品がそうであるように、だ(もしかしたら吉沢にとって柴田は参考例の一つなのかもしれない)。じっさい、作中で展開されているケンカや格闘技、社会に関する蘊蓄が、どれだけまじであろうがギャグであろうが、『足利アナーキー』の本質を違えることはないのであって、それこそ、ここで主人公と教師が交わしている説教やイズム語りにしたって、たいていの思いなしなんてこれぐらい益体のないものでしょう、程度のリアリティに捉まえておけばよいのだし、いやむしろ、〈オレはよォ…日本一のギャングになるのが…夢なんだ〉という宣誓は、いっそ清々しく、そうした夢を叶えるためにヴァイオレンスが必要不可欠である以上、暴力がふるわれなければならないというのは、理に適ってさえいる。すくなくとも、作品を構成するロジックや物語に内包される倫理に破綻をきたさない、だろう。当然、ストーリーが進んでいけば、テーマとして総括できる部分も浮き彫りになってくる違いない(例を挙げるなら、作中で高校卒業が十代のラストだと考えられていることはモラトリアムの定義に深く関わるポイントだ)。が、しかし、今はこれでいい、このレックレスなグルーヴが心地好い、と言わざるをえない。

 足利市の、不良のシーンでその名を知られた高校生たち、ハルキ、カザマサ、タカシ、ヒカルに、「シルバーラット」の元キングであるテルを加えた五人は、自覚的な若気の至りで、足利市のナンバー1ギャングに、ひいては栃木一のギャングに、ひいては日本一のギャングになるべく、「ファックジパング」を結成、他のギャング集団はもとより、筋金入りのヤクザすらも向こうに回し、頂点を目指そうとする。いったその自信はどこからくるのか。たんなる恥知らず。バカなのか。調子よく余裕をかます彼らは、現在、栃木県のトップに立つ「ギルティージャンク」に宣戦布告、でぶ三人兄弟のキング、そして潰し屋のジェットと事を構えることになるのだった。はたしてどうなることやら、という次第なのだが、いずれにせよ、名前もふざけた「ファックジパング」の猛追、猛追、猛追には、生き生き、旬として認められるだけのカタルシスが、十分、ある。

 1巻について→こちら
 1話目について→こちら

・その他吉沢潤一に関する文章
 「ボーイミーツガール」について→こちら
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