ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年01月20日
 涙 星 ―アース―1 (芳文社コミックス)

 『涙星』と書いて「アース」とある。立原あゆみの新シリーズである。副題は「チンピラ子守歌」となっていて、表紙カヴァーのカットやこの1巻の内容からあきらかなとおり、年端のいかぬ女児の存在が物語の重要なキーとなっている。テキ屋(的屋)の写楽は、腕っぷしがつよく、周囲からも信頼を置かれているが、女性にだらしない。そんな彼が、スナックの店員と行きずり、彼女の子供を預からなければならなくなってしまったことから、マンガははじまる。とにかく、歌という名のその四歳がやたらにかわいいのは、卑怯だ。喋り方は拙いのに、大人びてしっかりとした性格、作者の絵柄も手伝って、思わず目に入れたくなっちゃうじゃねえか。ちくしょう、あまりにも愛らしくて弱るよ。と、いきなりまじな話に入っていくが、少年や少女を題材とし、あるいは少年や少女と社会との対照に、必ずしも健全に機能していない現代をテーマ化するというのは、初期の頃から作者にとって重要な仕事の一つであった。もちろん、『本気!』における孤児院のエピソード等を例に出すまでもなく、ヤクザ・マンガの系にフィールドを移して以降もそれは変わらないし、そうした作品の主人公たちの極道がほとんど、親から見捨てられた子供の成長した姿であるというプロフィールを持っているのは指摘しておくべきだろう。そのような意識をおそらくは極端にまで徹底させていった結果、全体の構成を破綻させてしまったのが、過去作にあたる『地球儀(ほし)』なのだけれども、ストーリーのレベルでは関連性が見つけられないものの、この『涙星』とタイトルの部分で響き合うものを有しているのは、やはり興味深い。作者の熱心なファンにしてみれば、言うまでもないことかもしれないが、まだ自力では生きていかれない子供の未来を考えることが、この惑星を動かしているシステムの現在に向き合うことの、たぶん見立てになっているのだ。そうしてP100の〈かぐやかなんか知らねえが 月から地球を写していた そいつは地球が涙の粒に見えると言った かもしれねえな 悲しみばっかの星だもんな 地球は涙の星?〉というモノローグ、歌に視線を向ける写楽の表情が印象的にも思われる。しかし誤解を避けておきたいのは、『涙星』は決して徹頭徹尾シリアスな内容、重苦しく、息詰まるばかりの展開を備えているわけではない。たしかに、縄張りをめぐる闘争が背景に置かれてはいるのだけれども、『極道の食卓』以降とでもすべき、肩の力をすこし抜いた語り口が、一話一話の物腰をやわらかくしている。あくまでも日常の単位に付随するアップとダウン、微笑ましさ、やるせなさを際立たせているのである。

・その他立原あゆみに関する文章
 『仁義S』
  11巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
 『本気』文庫版
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  1・2巻について→こちら
 『本気!〜雑記〜』第1話について→こちら
 『恋愛』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『極道の食卓』
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ポリ公』
  4巻について→こちら
  2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
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