ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2010年01月15日
 ギャングキング 18巻 (ヤングキングコミックス)

 はたして「ワークマンズ編」とはなんだったのか。これに関しては、そのストーリーに感動した人間こそが詳しさを述べられたいのであって、ほんとうは口を挟むべきじゃないんだ、と思うのは、自分は内容をあまりよく理解できていない人間だからである。とはいえもちろん、極度に高度だったり難解な筋書きが描かれているわけではないだろう。いやむしろ、本質的には深みのあるテーマを安易なカタルシスへと落とし込んでいった結果、道理のかなっていないものになってしまっていると感じられるのだった。薔薇十字学園工業科2年生(通称・バラ学少年愚連隊)と、建設現場等で働く同世代(通称・ワークマンズ)の対立は、些細な行き違い、お互いがプライドを守りろうとし、なし崩し的に大規模な抗争にまで発展してゆく。これに収拾をつけるべく、当初は諍いを避けたいがために傍観を装っていた両者のリーダー、ジミーとベロとが、いよいよ直接に果たし合い、それぞれの想いを拳に託すこととなる、というのが、この柳内大樹の『ギャングキング』は18巻にあらわされているくだり、なのだけれど、当人が望まぬ事情のせいで学生と社会人にわかれてしまった少年たちの、ひじょうに複雑な立場の違いを題材にしながらも、結局は、タイマンはったらダチ、式の、この手のジャンルに有用なルールを、都合にあわせ、拡大解釈した以上の成果をあげられていない。したがって細かい点を見ていけば、様式にそったダイナミズムに任せるあまり、作中のロジックや倫理に綻びが出ているような気がしてしまう。もちろんそれは何も、道徳的であれ、ということではない。そうではなくて、物語をつくるうえでの技術を指したい。正直、ここで作者が挑んでいるテーマには、万鈞の重みが含まれている。モラトリアムに滞在することと社会に出立することとを線引き、境目で裂かれるほどに苦悩する若者の存在を、等しい傾向と資質を持ちつつも立場の異なった二者の並列によって、主張化しようとしている、これは労働のプライオリティが必ずしも保てなくなった現代において、重要な問題提起、一考に値する面を持っており、その志を高く買おう。としても、決して表現の、説得力、に対する好評価とはならないし、すべきではない。それをつよめるために必要なロジック、倫理に一貫性を求められないのであって、『ギャングキング』の場合、いくらかまずい箇所のほうが多くて目につきやすい。具体的に、もっとも大きなところを挙げるのであれば、やはり、主人公であるジミーのカリズマになるだろう。と、過去にもさんざん述べてきたことであるが、たとえば「ワークマンズ編」において援用されている、タイマンはったらダチ、式の展開がルールとして機能するためには、主人公の正義が十分に保証されていなければならない。そうしたときにはじめて、主人公の勝利が必然に、暴力的な行為が暴力的な行為にとどまらぬ意味、コミュニケーションの役割を得ることになるからである。にもかかわらず、その、いちばん大切な軸足が、ともすればおろそかになっているので、すでにいったとおり、安易なカタルシスとしか繋がっていかない。たしかに、ジミーとベロが雌雄を決するにあたり、〈今回は………負けるかもな――…ジミー……ジミーは昔から“怒り”の度合いで強さが変わるだろ…? 今回はアイツにその“怒り”の感情がいっさいないからなあ………………〉といわれていたはずが、〈ジミーくんの強さは………もはや“怒りの度合い”とかってレベルじゃなくなってるみたいだね――…〉と説明し直されることで、いちおう主人公が勝利するのに最低限欲しい条件は整えられている。が、しかし、そこに預けられているに違いない正義が、物語上のロジックや倫理の演繹とはなっておらず、不透明なまま、ひどく曖昧にも思われるので、素直に感動させられない。

 16巻について→こちら
 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
 4巻について→こちら
 3巻について→こちら

・その他柳内大樹に関する文章
 『ドリームキングR』
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『スマイル』(永田晃一との合作)について→こちら
 『柳内大樹短編集 柳内大樹』について→こちら
  「バンカラボーイズ」について→こちら
  「オヤジガリガリ」について→こちら
 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック