![Olympos(オリンポス)[通常版]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B002Z14972.09.TZZZZZZZ.jpg)
ロック・ミュージックのヒストリーには、相当の注目を集める一方で、誰も幸福になれないバンドというのがいくつも存在してきたが、90年代に活動していたとされる架空のグループであるLANDSも、その音源を聴くかぎり、決して恵まれた軌跡を辿れず、必ずしも有意義な結果を残せなかったのではないか、と思う。現時点では、彼らのバイオグラフィにあたる映画『BANDAGE』を未見であるため、じっさいどのようなストーリーを歩んだのかは知らないのだけれども、小林武史が指揮のもと、赤西仁(劇中の役名でいうなら高杉ナツ)をメインにして制作された『Olympus』の内容から判断するに、たとえばそこに堂々と付せられた「ファーストにしてラストアルバム!!」というコピーが、ああ、たしかにこのぐらいの精度でしか個々の楽曲を完成させられなかったのだとすれば、大勢の認知を得たとしても、泡沫の夢と消えるよりほかなかっただろうね、と皮肉的に思えたところで仕方がない。率直にいって、もうすこしやりようはなかったのか。どのナンバーも、まず、作曲のレベルにおいて、先行シングルの「BANDAGE」の段階ですでにうかがえたマイナス、つまり抑揚のないメロディとビートを単調に反復していることが小林の手癖以上に感じられない点は、まったく払拭されていないし、次に、小林のみならず岩井俊二をもクレジットに加えた作詞は、君(もしくは、おまえ)と僕の関係式を、ネガティヴな世界像と安易に直結させたうえで、がんばれ、とエールする、いうなればセカイ系がんばれソングとでもすべきイメージを屈託なく抱え込んでいるのだが、いくらか調子外れなエモーションになってしまっている。いやそれが前々ディケイドのリアリティだったのだと開き直れるかどうかも疑わしい。また、ヴォーカルに赤西をはじめ、ドラムに金子ノブアキ(RIZE)、ベースに前田啓介(レミオロメン)やキタダマキ、ギターに名越由貴夫(COPASS GRINDERS)や西川進、等々のよく知られたミュージシャンを揃えているにもかかわらず、3曲目の「二十歳の戦争」や5曲目の「鼓動」で聴かれる名越のプレイ以外はほとんど、没個性の演奏となってしまっており、あまり奮わされない。全般的にカタルシスが乏しいのである。2曲目の東京スカパラダイスオーケストラのメンバーが参加した「ska version」と、8曲目のMr.Childrenの「Tomorrow never knows」ふうにアレンジされた「perfect issue」だけではなく、9曲目の「サンキュー」のあとにもシークレット・トラックとしてアコースティックの弾き語りが収められている「元気」は、じつはその3つ目のヴァージョンが、アルバム中もっとも鮮烈な響きを持っているように感じられた。しかしまるで映画のワン・シーンから引っ張ってきたかのような仕掛けで、〈ああ・夢の中でも・あなたに会いたい〉と、掠れながら消え入りながら歌われるフレーズの、ひどく寂しい、せつなげな印象は、この作品の並びにとって、やはり例外的なものにすぎないだろう。
シングル「BANDAGE」について→こちら
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「RESCUE」について→こちら
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『KAT-TUN III - QUEEN OF PIRATES』について→こちら
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『Live of KAT-TUN “Real Face”』DVDについて→こちら
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コンサート『不滅の10日間ライブ KAT-TUN TOKYO DOME 2009』(09年・東京ドーム)
6月15日の公演について→こちら
5月22日の公演について→こちら
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