ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年02月16日
 パラパル 2 (2)

 それまで平凡な女子高生であったはずの池野小牧に降りかかった災難とは、脳内に一個の宇宙人が棲みついてしまったことである。その影響として嗅覚の鋭敏になった彼女には、日常のなかにある性(セックス)に関する匂いが気になって仕方がない。〈“発情”とか“行為後”とかの匂いって嫌なイメージしかない……〉のである。しかし、同じく宇宙人の寄生により聴覚が鋭くなっているらしい鶴見に関してだけは、そのような不快さを覚えることがなかった。小牧や鶴見と同様の理由で、触覚の冴えている黒川莉花にとって、性交(セックス)は空気と遊ぶようなもので、だから彼女は誰とでも寝るような女の子、エロ大王であったのだが、とある事件をきっかけに、「快・不快」のイメージが裏返ってしまう。もはや異性に触れられることにすら、気持ちが悪く、耐えられなくなった彼女であるけれども、やはり鶴見に関してだけは、安心を抱くことができるのであった。かくして三角関係っぽい構図が成り立つわけだが、そこに新しい登場人物が介入してくる。「やり逃げ四条」と呼ばれるモテモテ男子で、なぜか小牧に興味津々のようである。彼の目的は、恣意的な妊娠であり、そのために受精と着床に適切な女性を選り分ける。まだはっきりと明言されてはいないが、たぶん、四条くんは味覚の人なのではないかな。彼がキスを好むのは、その味で、妊娠の成否と相手のコンディションがわかるからなのだ、と思う。

 と、まあ、そういった具合に進行する石田拓実『パラパル』の2巻目であるが、これまでのところシリアスとコメディの配分もよく、充実というに相応しい内容ではないかしら。小牧が、“発情”の匂いと“プレ発情”の匂いを区分できるようになり、〈「気持ちいい」から好きになるのか 「好きになる」から気持ちいいのか 「どちらが先か?」 にわとり タマゴ らちもないお話〉と思うあたりを注視し、メタ・メッセージ(テーマ)のようなものを切り出すのであれば、シンプルに、機能的な恋愛から本質的な恋愛のモードへと移行してゆく過程、などといったふうになるのではないだろうか。身体感覚によって認識されるのとは別個の、もうちょい抽象的な想いといったものが、たとえば小牧と鶴見のあいだには生じている。また、謎めいた教師蓮沼の存在も含め、宇宙人たちのほんとうの目的とは何なのか、伏線の部分もちゃんと本編に沿って、効いている感じがする。しかし鶴見、いい人だなあ。こういう健全な男子が描かれるというのは、それだけでもうある種のワンダーであろう。

 ところで本作の内容について云々とはべつのレベルで、最近の僕が気になっているのは、いわゆる性交(セックス)のさいに、病気、とりわけエイズの問題などはもはや、いっさい除外されてしまう傾向があるのかな、ということだ。避妊具を用いるのは、あくまでも妊娠に対する警戒のためであって、妊娠の可能性がなければ、それらは使われる必要がないというような見解を、女子向けのマンガに限らず、けっこういろんな表現で見かける。覚えているところでは、たしか瀬尾公治のマンガ『涼風』のなかにもあったし、よしもとばななの小説なんかもそういったセオリーに基づいて性交(セックス)が扱われている。それというのはもしかすると、俗な言葉でいえば「ナマ」とか「中出し」みたいなものに対する抵抗が、一昔前よりも希薄になっているからなのではないか。あるいは一昔前が過剰であったのかもしれないが、いや、そのことを倫理的にどうとかいうのではなくて、そういった感性を、普通あるいは自然だとして受け入れるものがいったい何なのか、ちょっと気にはなっている。

 1巻についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(06年)
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