ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年11月20日
 ドリームキングR 5 (ヤングキングコミックス)

 アパレル業界で立身出世するためにはなぜかギャングやヤクザと事を構えなければならない、という『ドリームキングR』の展開には、少々首を傾げたくなるときもあるのだったが、よくよく考えるのであれば、それって要するに水商売系のマンガと同じ構造を持っているわけね。現実との照応をべつとするなら、おそらくはそうした職種を、アンダーグラウンドっぽいものにしたい、アンダーグラウンドっぽいものに見たい、式の欲望によって設定の水準は定められているのである。もちろん、アンダーグラウンドっぽいなる思いなしは、良い意味にも悪い意味にもなりうる。水商売系のマンガにおいては、陰惨なモチーフがほとんど不可分でついて回るのに対し、ファッション産業を題材とした場合、そのイメージからか、アンダーグラウンドっぽいことへの憧れのみが、甚だしく強調されてしまうのだと、『ドリームキングR』の、いかにも若者の夢にあふれたストーリー(!)は教えている。うん。宿敵であったオズマックス(a.k.a.オザキック)と和解し、コンビを組んだジョニーは、あらたなブランド「ゼロリズム」とその高位ブランドである「ゼロル」の構想に着手する。だが、そこでも対立し合うのが良きライヴァル関係というものか。ワンオフの洋服をなるたけ高額に吊り上げようとするオズマックスのプランに、ジョニーは〈そんなボッタクリみてえな値段つけられっかよ! 生地代はタダなんだぞ!!〉と憤るのだけれども、〈生地代はタダじゃねえ! おまえの労力の対価分だけ金を払ってるのと同じだ!!〉というオズマックの言い分も正しい。こうして、資本制の社会で自分たちの理想を叶えるため、ときには衝突しながら、成功への糸口を掴んでゆく主人公と仲間の奮闘が描かれるのかと思いきや、いや、やはり、なぜかギャングとの血みどろな抗争劇に足を突っ込むことでブランドの行く末を占うことになる、というのが、この5巻のハイライトだろう。たしかに、ジョニーらが地下に潜伏していたジャンキー集団「ブラックマンバ」と対決しなければならない理由と、作品のプロットにあからさまな無理はない。しかしそもそも、ストリート仕様のファッション業界ってそんなにもギャングと昵懇でなければやっていけない世界なのか。リアリティのレベルではなく、純粋に現実にそくしているのであれば、まったく難儀な話であるし、せいぜい水商売系のマンガと同じ程度には、救いがたい部分を突出させるべきなんじゃないかと思う。救いがたい部分を隠蔽してしまうのは、決して(柳内大樹がよく尊重している)想像力とは呼ばれまい。また、『ドリームキングR』のなかに働いているのは、これまでの物語を見るかぎり、労働をモラトリアムの一部に置き換えようとする力学であった。労働に従事することは必ずしもモラトリアムを脱したのとは同義になりえない。かわりにギャングを卒業することがモラトリアムを脱したのと同義に扱われる。そうして、いちおうは社会人として大成しようとする人物を描き出そうとしながらも、労働の内容、資本制の社会に深く関わることは、建て前だけを残し、巧妙に省かれている。

 4巻について→こちら 
 3巻について→こちら
 1巻について→こちら
 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

 小説『ドリームキング外伝―シブヤ大戦争』について→こちら

・柳内大樹に関する文章
 『スマイル』(永田晃一との合作)について→こちら
 『ギャングキング』
  16巻について→こちら
  15巻について→こちら
  14巻について→こちら
  13巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
 『柳内大樹短編集 柳内大樹』について→こちら
  「バンカラボーイズ」について→こちら
  「オヤジガリガリ」について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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