ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年11月16日
 L・DK 2 (講談社コミックスフレンド B)

 この『L・DK』2巻の、あとがきにあたる部分で、作者の渡辺あゆは「今後も王道まっしぐら目指して頑張ります。普遍的なものを面白く見せるって、ほんと難しいですね」といっている。なるほど、それが真に王道であり普遍的であるかはともかく、たしかに作中で繰り広げられていることの数々は、少女マンガの、とくにロマンティックなコメディにおけるクリシェを、いくらか過剰になぞらえてはいるだろう。突発的な同居生活、瓢箪から駒の恋愛、共有された秘密、ワキから絡んでくる噛ませ犬たち、等々。しかしながら、そうした表層の色づけをするにあたって、ほんらい押さえるべき本質をしっかり押さえているからこそ、作品には、目新しいポイントやサプライズはないにもかかわらず、行く末の気になる動線が生じているのである。父親の転勤にともない一人暮らしをはじめたばかりの西森葵は、諸般の事情により、同じ高校に通うイケメンさん、久我山終聖のルームメイトにされてしまう。不敵な態度の終聖にからかわれ、最初は反発を抱く葵であったが、それまで知れなかった彼の素顔を見、次第に惹かれてゆく。こうした筋書きにとって、やはり本質となるのは、特定の異性に対し、戸惑い、さながら不公平なまでに動揺させられるヒロインの心情だろう。ときおり、少女マンガのなかで描かれるペアに、サドとマゾに喩えられるような主従の関係が発生するのも、そうしたことのヴァリエーションだと仮定される。『L・DK』の場合、葵がしている片想いの障害は、そのほとんどが、彼女の言動が終聖に遅れをとってしまうことから、やってきている。終聖の気遣いでさえも、葵は後からしか気づけない、そして後から気づくことで、より関心を深めてしまう。すなわち、きわめて身近に暮らしているはずの二人なのに、両者のあいだには耐えずロスが発生し、それを葵が意識しながら、さらには乗り越えようとするプロセスが、いかにもロマンティックなコメディのクリシェをさまざま使い、あらわされているのだ。この、ヒロインの心情を再現する段取りの、様式的な方法論で徹底されていることが、『L・DK』という作品の軸足になっているといえる。もちろんそのとき、読み手であるこちらは、一つの疑問を感じないではない。たとえ葵が終聖に追いつこうとも、彼の側の気持ちがそこに合致しなければ、決して両想いの幸福とはならないのではないか。要するに、終聖が葵に惹かれている可能性があるとするなら、はたして彼女のいったいどこに代えがたいまでの魅力を見ているのか(見ることになるのか)、すくなくとも現段階でこれは、保留に近しい状態に止められたまま、やり過ごされている。

 1巻について→こちら 

・その他渡辺あゆに関する文章
 『オトメゴコロ』
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『キミがスキ』
  2巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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