ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年11月08日
 ランチキ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 たとえば、バツとテリー(大島やすいち『バツ&テリー』の)や、トオルとヒロシ(きうちかずひろ『ビー・バップ・ハイスクール』のね)、三橋と伊藤(西森博之『今日から俺は!!』のさ)、亜輝と直巳(米原秀幸の『ウダウダやってるヒマはねェ!』のだ)等々、例を挙げればきりがないくらい、主人公をダブルにし、男同士のフィフティ・フィフティな関係性を描いた作品は、不良少年を題材化したマンガ史において一つの系譜を為してさえいるだろう。もちろん、それはそのジャンルに必ずしも特殊な形式ではないし、旧いフィクションにいくらでもルーツは遡ってゆける。二人一組の物語、いわゆるバディもの、のレパートリーにほかならない。が、さしあたり押さえておくべきなのは、個々の作品が持っている特徴をべつとすれば、すべて、ヤンキーというこの国の現代に固有な心性を前提条件にしたさい、ホモ・ソーシャルな連帯はいかなる価値を持つのか、をダイレクトに問うかっこうになっていることである。

 不良少年である主人公たちの関係性は、正しく野郎ならではの不器用な友情を描いているのだ、と素朴に美化することができる。しかし、その判断はあくまでもヤンキイッシュなライフ・スタイルのなかでくだされる。こうしたテーマのニュー・ヴァージョンとして見るべきなのが、奥嶋ひろまさの『ランチキ』だろう。鹿野乱吉と金田哲雄の二人は、周辺から「勉強の翠山」と呼ばれている中学校の生徒で、卒業まであと三ヶ月、とくに成し遂げたこともなく、悔いを残し、退屈を持て余していたはずの彼らが、ある光景を前に衝撃を受け、影響され、ケンカの勝利に自分たちの青春をかけるべく、チーム「しかばね(鹿金)」を結成、不良校である示現中学と事を構えながら、じょじょに名をあげてゆく。1巻に示されたあらましを述べるとこうなる。

 時代がくだっているがゆえに、ヤンキー・マンガ的なテーマのニュー・ヴァージョンと見なせるが、ストーリーの段取り自体は、ひじょうに古めかしいといえる。小さな世界の成り上がりを夢想することによって、主人公たちのモチベーションは担保されているのである。学園生活にかぎられた小さな世界は、もっと大きな社会の枠を考慮したとき、たちまち空虚なものになりかねない。そのような認識からの必死な逃亡、モラトリアム下の抵抗こそが、作中で、衝動と呼ばれ、自己表現と指され、青春と意図されているものの正体だと思う。ただし、やはり着目せざるをえないのは、それが二人一組のペアになって成立させられている点だ。小賢しく、卑怯な手も辞さない乱吉と、根はまっすぐで、高潔な哲雄のコンビネーションは、お互いがお互いの分身であると批評されるものとは、おそらく異なっている。

 それこそ、『今日から俺は!!』の三橋にとって、分身的な存在がいるとすれば、それは相棒の伊藤よりもむしろ、中野であったり、あるいは相良であったりするように、たとえば『ウダウダやってるヒマはねェ!』の亜輝に、もしも分身的な存在がいるとすれば、それは相棒の直巳よりもむしろ、アマギンのほうが相応しかったりするように、性質を等しくするが、相似性を別個とするほどに非対称な関係性が、この手の作品を根っこから支えているのである。『ランチキ』の場合もやはり、主人公たちは、環境をともにするなかで、認識を共有し、意見と行動を一致させてはいるが、きわめて非対称な関係性を保っている。要するに、決して同一化されえないポジションをキープしている。たぶん、彼らのあいだの明確な差異が、コミュニケーションという文脈を物語に発生させているのだ。そして、そのコミュニケーションは、すでにいったとおり、ヤンキイッシュでホモ・ソーシャルな価値観に拠っている。問題は、それが基礎である以上、今後の展開を経て、どこまで話を拡げていけるか、突っ込んだ提起が為されるか、になってくる。

 絵柄は、ときおり(じっさい作者と交流があるらしい)柳内大樹を思い出させたりするけれども、猿渡哲也のアシスタント出身だけあって、アクションのシーンには、なかなかの迫力がある。同じ『月刊少年チャンピオン』に連載されている『ドロップ』(品川ヒロシ・鈴木大)は、それが実話をベースにしているという以外、高校生ではなく、あえて中学生にした設定をぜんぜんうまく生かせていないが、さて後発であるぶん、そのへんをどう扱っていくのかも興味のわくところ。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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