ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年11月05日
 ガキホス 1 (ヤングキングコミックス)

 今やホストを題材にしたマンガは青年誌やヤング誌を中心にまったく珍しいものではないだろう。しかしそのほとんどが、いやホストにかぎらず水商売をテーマにしたものの多くが、といえるかもしれないが、ダウナーな展開のなかに夜の世界の闇とでもすべき不幸を盛り込むことでしかドラマをつくれないのは、ジャンルのイディオムにおけるある種の限界をうかがわせる。結局のところ読み手は、堅気の商売じゃないから仕方ないね、という思想によって、それを了解しているにすぎないのである。もちろん、そうした職業差別になりかねない意識を誘発する仕組みは、表面上、隠蔽されており、作中人物の心理を(まるでヤクザのように)特殊化すると同時に(まるでサラリーマンのように)一般化可能なエモーションへと拡大するというアクロバットを行うことで、作品の体裁は整えられているわけだけれど、それは結果的に、創作のレベルにおける倫理がいくらか不自然にゆがめられてしまっているのではないかとの疑問を、ときおり生じさせる。このことは水商売を描いたフィクションの前進に関し、すでに大きな壁となってあらわれてさえいる。さて。本題は、きたがわ翔の『ガキホス』の1巻なのだが、このマンガの特徴を挙げるとすれば、やはりホストに題材をとりながらも、きわめてアッパーなストーリーが繰り広げられている点だと思う。テレビにも取材されるほどの大家族で育った白斗は、二十歳になって、独立し、自分の信念を叶えるべく、歌舞伎町のホスト・クラブ「マゼンタハーレム」のキャストに応募する。憧れの存在であるマンガ「ホスプリ」の主人公、如月輝に一歩でも近づくためであった。〈……オレも彼のように生きられたら……だからオレは信じてるんだ 人を愛する気持ちさえ忘れなければ すべての人を幸せに出来るって――…〉と誓う白斗は、ラブという源氏名を戴き、新米ホストの日々を励んでゆく。たしかにこの手の系にありがちな、裏切り、刃傷沙汰、心の病、生まれや育ちの不運、等々をモチーフの一部に使ってはいるが、作品の魅力は、白斗=ラブの天真爛漫な言動が、夜の世界を縁取っているような暗さに、明るく幸せな光をあてていることにほかならない。極度にアッパーな展開は、綺麗事の積み重ねにも思えるところがあるにはある。けれども、その手法は、まあ物語が膨らんでいけばどうなるかは不明だとしても現時点では、水商売を、堅気以外の何か、に脚色してしまうことへの抵抗となっている。ところで、きたがわ翔、並行して進めている『BENGO!』も、マンガに影響された青年がヒーローを目指す出だしであったが、『ガキホス』も、職種こそ違えど、そうだ。両者の徹底具合からするに、サブ・カルチャーが生き方のロール・モデルに値するという出発点は、たんにネタが被っているのではなく、この国の現在の精神性を反映していると考えてよいのかもしれない。

・その他きたがわ翔に関する文章
 『デス・スウィーパー』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『刑事が一匹』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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