ところで『蒼太の包丁』(末田雄一郎・本庄 敬)の22巻と、この『味いちもんめ〜独立編〜』(倉田よしみ・あべ善太・福田幸江)の3巻には、和食を題材にした料理マンガという括り以外にも、一つ共通点がある。それは、社会的責任において上に立っている人間は下の人間に厳しく接しなければならない場面があるのではないか、こうしたテーマを持っているかのようなエピソードが収められていることだ。どちらもおそらくは、団塊ジュニアもしくはポスト団塊ジュニア以降の世代が、加齢するにつれ、どうすれば他人を管理する側に相応しくなれるのかを、若い主人公が自立しようとする姿に描いているのである。料理人である主人公たちが置かれているのは、ひとまず特殊な環境だと設定されているが、しかし彼らがサラリーマンの営みをワキに見、参照し、上司と部下の関係性を改めて認識するというシーンを置くことで、繰り広げられている内容が一般化されていたり、先行する世代との態度の違いを通じ、彼らが抱えている甘さが相対化されるという構図を持っているのも、じつは両作品のあいだで等しい。団塊ジュニアあるいはポスト団塊ジュニア以降の若者にとって成熟とは何か、このことを社会的な立場を交えながら表現しているマンガがほかにどれだけあるかは寡聞にして知らないけれども、00年代も終わろうとする同じ時期に出た二冊の料理マンガが、はからずもそれを意識させるエピソードを収めているのは、意外と興味深い。かつての仲間、ナベや早瀬が助っ人に来てくれたこともあって、伊橋が板長をつとめる「楽庵」もそれなり回るようになってきた。だが、ほんらいの従業員で、いまだ修行中の身である啓介は、周囲の働きをすっかり頼るようになってしまい、ナベや早瀬は自分たちが抜けたときのことを考えると、気が気ではない。その心配は伊橋にも伝わってき、じっさい上に立つ者として、どうすれば啓介の成長を助けられるか、うまく育てられるか、新たな課題を得ざるをえなくなるのだった。まあ旧くからのファンにしてみれば、おいおい、伊橋よお、すっかり丸くなりやがって、と思う部分もあるにはあるが、あの、頼りなかったナベや早瀬がいつの間にか立派な職人になっているのと同じく、彼もまた、世間知らずで甘ったれた青年時代を終わりなく引きずっているわけにはいかない。自分探しを卒業、独立し、ようやく社会的な責任を生きはじめた伊橋の、未知を経験するなかでのたゆまぬ奮闘が、『味いちもんめ〜独立編〜』の主要だろう。現時点では店の構えがどうのというより、スタッフ間のコミュニケーションに、ストーリーは大きく割かれているけれど、じょじょに地盤は固まっている。
2巻について→こちら
1巻について→こちら
『新・味いちもんめ』
21巻について→こちら
20巻について→こちら
19巻について→こちら
ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年11月01日
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