ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年10月31日
 スワンソング【完全初回限定盤】 スワンソング

 KinKi Kidsのニュー・シングルとなる「スワンソング」は、「硝子の少年」をはじめ初期の代表曲にいくつも関わってきた松本隆が詞を提供しており、絢爛なストリングスと打ち込みのリズムがバックのトラックを盛り上げていくのに反して、歌われるメロディはせつなく、綱引きが幻想的に響くなか、今にも壊れそうな関係性をイメージさせる。じつにこのユニットらしいナイーヴさのよく出たナンバーとなっている。が、それにしても「スワンソング」のみならず、今回のリリースのために揃えられた楽曲の数々からは、まるで少年時代に別れを告げているかのような儚さを感じてしまう。あるいは、三十歳代に入り、かつての幼さとは異なるベクトルを持ちはじめた堂本光一と堂本剛の表現力が、そのように受け取らせるのかもしれない。初回盤と通常盤の双方に収められた2曲目の「サマルェカダス 〜another oasis〜」は、しっとり、落ち着いた抑揚とアレンジが、クラシックな歌謡曲を彷彿させる。二人のヴォーカルが何よりも前にき、光一くんの力み、剛くんの伸び、いま現在におけるKinki Kidsというコントラストが、コーラスの箇所に〈幼い僕なら裸足で行けた・憧れと喜びがあふれだす世界〉とあるとおり、過去からはセパレートされた場所と心情を描く。正直、自分の好みでいえば「スワンソング」よりもぐっとくる。作曲も手がけているマシコタツロウの詞は、ひじょうにまっすぐな悲哀を孕んでいて、〈僕が生まれたその日から季節は巡り・地図も持たずにここまで歩いた・絵具が足りなくなるほど描いた夢なら・額に飾ってばかりじゃ意味がない〉と書きつけられた出だし、そこをソロでとっている剛くんの、さすがに上手い、艶っぽさもあり、とたんに引き込まれる。初回盤、3曲目の「深紅の花」も、アップ・テンポでダンサブルなナンバーだが、基調はやはり、物悲しい。ところで初回盤に並んでいる3曲はどれも、詞に盛り込まれたフレーズはもとより、林部直樹のギターがそうさせるのか、どこか異国めいた情緒を共通して持っている。まあ、アイドルのポップスによくあらわれる抽象性にすぎないのだけれども、それがある種の距離感をつよく表象するふうになっていることが、じつは重要だ。むろん、一つにはラヴ・ソングのニュアンスで主体と相手のあいだの隔たりを意味しているわけだが、もう一つ、自分自身をかえりみた主体の過去と現在とに区切られてしまった感傷を肩代わりしているのだろう。すこしずつ遠ざかる景色がうつくしく見えるのは、もしかすれば二度とは戻れない予感を含んでいるためであって、おそらくは「スワンソング」の収録曲に聴こえる印象、少年時代に別れを告げているかのような儚さも、そうしたあたりに起因している。通常盤の3曲目である「面影」は、タイトルからしてもう、パセティックなバラードで、「サマルェカダス」と同じく、アレンジはクラシックな歌謡曲を思わせる。光一くんと剛くんとが、前半と後半のハーモニーで主旋律を入れ替わる、はっきりとわかれてゆく両者の個性が、しみじみ、余韻に繋がる。

 『Secret Code』について→こちら

・その他堂本剛に関する文章
 『RAIN』について→こちら
 コンサート『ENDLICHERI☆ENDLICHERI CHERI 4 U』(09年8月19日・国立代々木競技場第一体育館)について→こちら
 『空 〜 美しい我の空』『美 我 空 - ビ ガ ク 〜 my beautiful sky』について→こちら
 『I AND 愛』について→こちら
 『Coward』について→こちら
 「ソメイヨシノ」について→こちら
 [si:]について→こちら
 『僕の靴音』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(09年)
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