ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年10月30日
 蒼太の包丁 22 (マンサンコミックス)

 ああ、〈…「頑張ってる」ことで自分を許してたら未来はないで!〉という花ノ井の言葉には、どこかこう、考えさせられるものがあるな。主人公である蒼太が父親を亡くしてからの『蒼太の包丁』は、ストーリー上、彼の自立を描くような色合いを濃くしている。もちろんそれは初期の頃よりすでに顕在していたテーマではあったが、ここ数巻、さらにつよまってきていると感じられる。そして、いつまでも半人前のままで止まっているわけにはいかず、決意と躊躇いのなかを奔走する蒼太の姿は、必ずしも料理マンガというジャンルにのみ、あらわれるものではないだろう。いや、和食の世界を一つの手がかりとし、もっとずっと普遍的な営みが描かれているので、気づけば彼の、思い悩み、戸惑う表情を応援したくなるのだ。22巻も今までどおり、エピソードの単位では盛りだくさんの内容となっているけれども、基本的には、いかに蒼太が成長を遂げ、しかしそれでもいまだ自らの志には届けないでいるか、丁寧に汲み取ってゆく。頭に引いたのは、先に自分の店を持つことになった元同僚の花ノ井が、彼の立場からすれば、才能はあるのにぐずぐずして見える蒼太に向かい、告げた言葉である。これに対し、蒼太は〈でも僕には頑張って行くことが自分の支えなんだけれど〉と心に思う。おそらく、花ノ井の考えも、蒼太の意識にしても、どちらか一方が間違っているということはない。そもそも両者は出会ったときより、弁証し合う関係にある。だが、結果を求める段階にあっては、蒼太のスタンスでは足踏みに感じられてしまうことが、いわば物語の引きをつくっている。ところでまあ、今や立派になった須貝も登場したばかりの頃は、とんだ坊ちゃんだったけれど、この巻で「富み久」に新しく入ってくる垣内もまた、なかなか手強い。社会を知らない彼とのやりとりを通じて、蒼太は目上としての自覚を得なければならないというのが、あくまでも本筋に関わっている点で、結局のところ垣内はその役割を終えたらいなくなってしまうのだが、可愛らしいような憎たらしいような顔つきに、いやいやこいつは怒ってやらなきゃだめだろう。わざとそういうふうに表現してあるのはわかっているものの、ついつい。度量がせめえのかな。

 20巻について→こちら
 18巻について→こちら
 17巻について→こちら
 16巻について→こちら
 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 11巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック