ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月29日
 佐藤ざくりの『おバカちゃん、恋語りき』だけはもう絶対にまちがいねえな。何もかもずっこけているくせに、ひたすらキュート、この案配で作品が成り立っていることにびっくりすらあ。結局のところ、楽しい、の一言に尽きるのだった。もちろん、3巻に入ってもそれは変わらない。わいわいがやがや、まあいろいろあり、トキオと付き合いはじめた音色であるが、心のなかではまだ、深のことを忘れられないでいる。そして深のほうもじつは、平静な表情の奥に、音色に惹かれる想いを隠していた。二人を見、しばしば嫉妬に駆られるトキオ、こうなってくれば、ふつう、ひゃあ三角関係の泥沼って嫌ねえ、となりそうなものだけれど、『おバカちゃん、恋語りき』の場合、ぜんぜんそんなことはないんだ。音色の馬鹿さ加減もたいがいだが、シリアスな場面の訪れるたびに予定調和をぶち壊してゆく、トキオの頭の悪さがじつにすばらしい。おまえ、ほんとうにすげえ男だぜ。この段階で、通常の少女マンガにおけるラヴ・ロマンスにしたら、いささかユニークな変調が加えられているのに、もう一人、度の過ぎた人物が物語に参画してくるのだから、たまらない。生徒会長の美羅川日記である。優等生のうえ、美人さんでありながらも、やっぱり奇人さんの類かい。彼女の存在は、直接、前述のトライアングルに絡んでくるわけではないが、音色と深とがいまだに好き合っていることを見抜き、二人をくっつけようと、当人たちにしてみたら、余計なお世話というにはあまりにも傍迷惑な親切を働かせてくるのだった。半ば好奇心で、だ。いや、でもたぶん、それが必ずや悪になるとはかぎらないだろう。音色を案じる友人の虹花が、〈何よけーな事してくれてんだ このキツネ目女!!(略)音色はトキオとつき合ってんだよ!!(略)〉と食ってかかってくるのに対し、日記が述べるこういうセリフは、意外と、トキオや深に抱える音色の躊躇いを、言い当てているのではないか。〈つらくない恋なんて恋じゃないね〉。あいかわらずの初心さとはべつの意味で、たしかに音色は臆病になった。傷つかなくて済むことは正しいのかもしれない。だが、それが決して良いとは思われない可能性を、いちおう日記の思惑はよそにしても、彼女の言葉自体は指摘しているのであって、このへん、恋愛感情へのアプローチを、ギャグではぐらかすばかりではなく、まじだと受け取られるのもやぶさかではない、じつに少女マンガらしいポテンシャルが、よく出ている。いやはや、にしても、である。音色が西日本最強の女であったというアバウトな設定を、修学旅行のくだりで、こう生かすかい。あんがい日記が関西弁みたいな喋り方だったりするのも伏線だったりするのかしらね(是が非でも抽選でプレゼントされるらしいキャラクター・ブックを当てねばなるまい)。やたら高いテンションで飛ばす作者がいったい何を考えているかわからないぶん、話がどう転がってゆくんだか見えないのが、いいよ。

 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

 『otona・pink』2巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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