ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月28日
 カノジョは嘘を愛しすぎてる 1 (フラワーコミックス) カノジョは嘘を愛しすぎてる 2 (フラワーコミックス)

 青木琴美の、たとえば『僕の妹に恋をする』にしたって『僕の初恋をキミに捧ぐ』にしても、筋立てはいささか荒唐無稽で、もしかすれば地に足をつけていないふうに受け取られるところがあったかもしれないが、一途な恋愛を試しながら見届けるかのような展開はまぎれもなくシリアスであったし、いくつかの演出は十分に劇的であった。そのことはまた、新作である『カノジョは嘘を愛しすぎてる』にも、おそらくは同時発売となった1巻と2巻を読むかぎり、いえるだろう。その青年、小笠原秋は、じつは大がつくほどの人気を誇るロック・アーティスト、クリュードプレイ(CRUED PLAY)のオリジナル・メンバーなのだけれども、目立つことを嫌い、表には出ず、ソング・ライターとしてバンドに参加、作品にクレジットされている。名前は知られているが、顔は知られていないというやつだ。彼にしてみれば、売れて有名になるよりも〈這いつくばるような小さな歌をまだ作っていたかった〉。その少女、小枝理子は、初心ではあるが平凡な、どこにでもいそうな女子高生であった。音楽が好きで、歌うことが好きで、クリュードプレイの熱狂的なファンではあるけれども、むろん秋との接点は一個もない。ほんらい二人は出会わない。しかし恋人に傷つけられた秋が、ほとんど腹いせで、たまたま通りすがった理子に声をかけ、そして彼女が、彼の嘘を嘘と気づかぬまま惹かれてゆくことから、二人の運命はおおきく変わりはじめる。そう、だからこそ秋はきっと、のちになってこう言うのに違いない。〈付き合い始めたあの頃 僕はこれっぽっちもキミのこと好きじゃなかった 全部嘘だった〉。少女マンガ特有の、派手派手しく毒々しくデコレイトされたショー・ビジネスの世界には、さすがにそれでも今どきちょっとねえ、と思わずにいられないが、しかし本質は、純粋であるほどに一途な少女の想いと、それに撃たれる青年のナイーヴな苦悩であって、二人の交わりが「あの頃」と告げられるラヴ・ストーリーならではの緊張を張り詰めさせている。自らのアイデンティティを秘密にして理子に接する秋の存在は、つまり、財産や経歴、才能をべつにしてしまえば、恋愛はいったい何によって選ばれるのか、という問いにほかならない。そのことも踏まえ、今後、波瀾万丈を予感させる出だしは、じつに魅力的だといってよい。ただし、理子までもがショー・ビジネスの世界に足を踏み入れていきそうな気配をにおわせているのが、すこし、気にかかる。なぜならば、現時点における秋と理子の明確な立場の違い、性別の差、年齢の差も込みで、両者の、対照のはっきりとしていることが、やはり、全体の構図を決めているふうに見えるからである。必然、そのへんが異なってきたときにこうして得ているイメージも変わってくる可能性は高い。だが、まあ、いずれにせよ、さまざまに翻弄されながら彼らの行き着く場所、要するに、すべての出来事を「あの頃」と述べる主体がいるはずの現在があらわれてくるのは、まだまだずっと先のことだろう。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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