ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月27日
 作者さん、ごくろうさま、そしてありがとう、こんなにも素敵なラヴ・ストーリーを描いてくれてありがとう。おしまいのページを閉じて、思わず感謝しながら、うんうん泣けてきてしまう。藤原よしこの『恋したがりのブルー』は、まさしくそんなマンガであった。最後までいってみれば、ありえないぐらいに大げさでドラマティックな出来事は何一つ起こらずじまい。いや、違う。正確には、ありふれていてささやかな出来事のすべてが、これ以上ないほど鮮明に輝き、だからこそドラマティックに跳ね、ほんのりあたたかく、ちくりと痛むようなエモーションを連れてきてくれることが、とてもよかった。結局のところ、作中にはごく普通の少年少女四人が恋愛と友情にためらう姿しかあらわされていない。だがそれだけでも十分、すぐれた作品は成り立つのだということを教えられる。好き合っているにもかかわらず、陸と別れなければならなかった蒼は、自分を大切にしてくれる海にもっと傾きたいのだけれども、胸の内で張り詰める苦しさを消せない。陸のほうも、ほんらいは初恋の人であった清乃にやさしく接しようとすればするたび、蒼への気持ちが募る。陸と清乃は、それに気づいてもなお、自分の想いを諦められない。こうして縺れた糸が、はたして四人のあいだに、ハッピー・エンドをもたらすことはあるのだろうか。というのが、この最終6巻に展開されているぜんぶ、である。はっきり、それよりもおおきな事件はおよそ起こらないにもかかわらず、蒼が、陸が、海が、清乃が、喜びや悲しみと引き換えに、絡んだ糸を一本一本ほどき、収まるべき位置に結び直してゆく様子の、そのちいさな切実さに、たいへん引き込まれるものがある。決して長いお話ではない。〈オレの 本物の彼女になってくれないか チューもHもする 本物の彼女になってくれないか〉という、たったそれっぽっちの願い。繰り広げられるのは、わずか四人ばかりの関係にすぎない。しかし、そういうミニマムな、あるいは等身大の情緒が、あますことなく再現されているので、心動かされるのだ。感動するようにつくられた青春のワン・シーンというより、どこかで誰かが経験している(していた)青春のワン・シーンを丁寧に切り取ってきているみたい。結末に至るくだり、ああ、こんな恋をしたいな、憧れるのではなく、ああ、恋とはたしかにこういうものだったね、と、つよく実感される。じつは『恋したがりのブルー』の題名とは裏腹に、誰もがヒロインである蒼に恋をしていたマンガであったと思う。望んだり、求める側であったはずの蒼が、いつしか、望まれ、求められる側に回っていた。そのような反転が、平々凡々としている蒼の何がいったい魅力的なのか、述べるかわりになっている。あるいは恋の不思議さが、彼女たちの位置場所を動かしてしまっているのかもしれない。そこにドラマの波風が立っている。他愛もない日常が輝き出し、めくるめくドラマの。せつなく、甘い。

 5巻について→こちら
 4巻について→こちら 
 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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