ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月26日
 サムライソルジャー 6 (ヤングジャンプコミックス)

 この国に義務教育が確立されている以上、ほとんど誰もが、学校や教室という単位の共同体をいかに生きるか、を経験することになっている。すなわちそれは制度に還元可能な問題にほかならない。ましてや義務教育より先への進学が、こうも一般化している現在にあっては、その仕組みはおよそ徹底されているといってよい。高校デビューを経て、校内でのポジションやクラスメイトとの関係性をやり直そうとするストーリーは、もはや古典的であるほどにスタンダードだ。だがしかしなぜか、そこからそれてしまう人間というのがいる。いつの時代にも一定数存在する。不良であれ、引きこもりであれ、多くの場合、彼らは落伍したと見なされる。もちろん、そうした視線は共同体の内部から外へ向けて発せられているものである。さりとて、落伍者にされてしまった彼らにも孤独はおそろしいものであるに違いなく、一人ぼっちの奈落から逃れるためのネットワークがあるのなら、それを傍受し、どこかで折り合いをつけ、加えてもらわなければならない。はたして、そこで組み立てられた共同体もまた、何かしらかの制度を後ろ楯にしているのだとすれば、本質上、彼らをアウトサイダーと呼ぶことはできないのではないか。このような懐疑を、モラトリアムを終えて、社会に出、社会と直接取り引きしなければならなくなった元不良少年たちを用い、表現しようとしたのが、田中宏の『莫逆家族』(99年〜04年)であり、高橋ヒロシの『QP』(99年〜01年)であって、そして両者によって暗示された題材を、ふたたび学園という普遍性を持ち合わせた区域に復帰させ、青春の像にあらたな突破口を導き出そうとしたのが、山本隆一郎の『GOLD』(01年〜06年)だといえる。

 ところで先般、高橋ヒロシの『WORST』(01年〜)の、第一部を総集編で読み返していたら、いろいろと考えさせられる点があった。もちろん『WORST』には、『QP』で見かけられたテーマを受け継いでいるふしがある。さらには作中人物が『GOLD』の単行本を読んでいるシーンがあるように、かの作品と共有する問題意識もおそらくはあっただろう。しかしながら、学園というモチーフにかぎっていうのであれば、第一部の段階ですでに破綻しかけている。かわりにバックボーンを支えているのは、梅星一家であったり、武装戦線であったり、天地の軍団であったり、要するに、ファミリー、チーム、マフィアと横文字に言い換えられる結束である。これはたぶん、作者が欧米のギャング映画に多くの着想を得ているためなのだが、つまり、そういう(ある意味で大幅にアメリカナイズされた)制度を引っ張ってくることで、学校や教室という単位とはべつの共同体を、作中人物たちにあてがっているのである。だがそのことが、国盗り合戦のヴァリエーションであるようなスペクタクルを適宜補強する以上の効果をあげているかどうか、評価は分かれると思う。

 いささか遠回りしてしまったけれども、本題は山本隆一郎の『サムライソルジャー』である。主人公である藤村新太郎と『ZERO』を率い渋谷統一をはかる桐生達也の対立、そして桐生が言ったとされる「喧嘩天国」の実現、〈“さむらいそるじゃー”“雫は生きている”〉なる発言、これらのキー・ポイントをいったんワキによけ、鮫島正平を頂点にいだくことで正式に結束を固めた『渋谷連合』が、桐生不在の『ZERO』に対し、猛追をかけるというのが、5巻から6巻にまたがる流れであり、4巻までの展開に比べると、やや定型的な抗争劇の血みどろに落ち着いてしまった感があるものの、いや、『ZERO』のメンバーの過去回想を通じ、描かれているのは、間違いなく、あらかじめ居場所の失われている人間がいかにして共同体と関わるか、の物語であるし、反面、鮫島やその腹心に収まった市川佑介の狂気ともとれる姿からうかがえるのは、共同体に裏切られた人間の不信であり復讐、だろう。しかして、ここで重要となってくるのは、かねてより藤村の言動が教えているとおり、ほんらい彼らは、モラトリアムを完結させて、不良(ガキ)の世界の外側へと出ていき、いち個人を生きなければならない、自立しなければならない立場にある、ということだ。週刊連載のペースであるせいか、もったいぶったところの多くなっている印象は否めないが、おそらく、すべてのパートはそこに向かい、輪転している。

 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

 外伝「吉田薫」について→こちら

・その他山本隆一郎に関する文章
 『紙の翼』について→こちら
 『GOLD』
  16巻について→こちら
  15巻について→こちら
  13巻と14巻について→こちら
  12巻について→こちら
  11巻につてい→こちら
  10巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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