ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月24日
 密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿

 副題に「名探偵音野順の事件簿」とあるように、この、北山猛邦の『密室から黒猫を取り出す方法』は、『踊るジョーカー』の続篇というか、推理作家である白瀬白夜と引きこもりがちな名探偵である音野順のコンビを主人公にするシリーズの第二弾で、もちろん前作と同じく、あかるめな雰囲気のミステリ小説になっている。まあ、扱われている事件のほとんどが殺人である以上、あかるい、というのもどうかと口を挟めたりするけれど、暗い恩讐ですらもさらりと軽く流れていくところが、やはり最大の魅力に感じれてしまうのだから仕方がない。裏を返すなら、自己中心的な悲劇にかかずらっているような甘ちゃんに完全犯罪は成し遂げられないことを作品は喝破しているといってしまってよい、かもしれない。あるいはだからこそ、唯一完全犯罪を成し遂げてしまった「音楽は凶器じゃない」の犯人だけが最後まで、いったいどんなタイプであったのか、具体的な像を結んでこちらには見えてこないのだろう。かの人物はある意味で「名探偵音野順の事件簿」のパターンを逸しているのである。全部で五つの、基本的にはハウダニット式にトリックを展開した小品が並んでいるが、それらの欺きはどれも、仕組もうとする側がたとえ疑り深い性格の持ち主であったとしても、最終的にはこの世界を支える方程式を信頼していなければ成り立たない。しかしそういった前提が、言い換えるならば、この世界のありよう自体が決して完璧ではないため、どこかで破綻をきたしてしまう。そのことはもしかしたら、表題作にあたる「密室から黒猫を取り出す方法」において、犯人の目の前で生じるイレギュラーが教えている。正直な点、この世界が完璧であろうがなかろうが、たいていの人間は平々凡々に日常を過ごすことはできる。主人公のコンビが、場合によっては不謹慎なほどひょうきんに見えるのは、彼らがその不完全さの上に載って回る世界を、自然と受け入れているからなのだと思う。

 『踊るジョーカー』について→こちら

・その他北山猛邦に関する文章
 『恋煩い』について→こちら
 『妖精の学校』について→こちら
 『少年検閲官』について→こちら
 『「ギロチン城」殺人事件』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(09年)
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