ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月15日
 フツパー

 90年代の『EARTH VS THE WILDHEARTS』や『P.H.U.Q』と比べてどうというのはさておき、この『CHUTZPAH!(フツパー)』は、間違いなく、00年代におけるTHE WILDHEARTS(ワイルドハーツ)のキャリアにとって最良の、そして最高の一作といってしまっていいだろうね。いやはや、まだこれだけのポテンシャルを残しているとは思わなかったな、というやつである。それこそ、『ロッキング・オン』10月号のレビューで中込智子が「いわば彼らの集大成的な作品と言える」と述べていて、『BURRN!』10月号のレビューで小澤明久が「初心回帰的でもあり集大成的でもある」と評してるとおり、ほとんど意見が一致しているのもじつに納得がいくのであった。うんうん、たしかにそのようなタッチのアルバムだといえる。かつてイギリスでブリット・ポップが盛んであった頃、その裏でメロディアスにアップ・テンポかつハードなサウンドを極めたアーティストであったが、同時代のアメリカにおけるポップ・パンクとも異なっていたのは、基本的にスリージーなロックン・ロールでありながら、たとえばTHE BEATLESからSEPULTURAまでといった具合に幅広い参照項を、旧いも新しいも関係なくミックスし、ほんらいなら散漫になってしまいそうなところを、すぐれたソング・ライティングのセンスとフレキシブルなプレイをこなす演奏力でまとめ上げ、一種独特なサウンドを具体化することに成功していたためであるが、そのような特徴を十分思い出させる内容に『CHUTZPAH!』はなっており、すくなくともここ数作、アルバムの単位ではもうちょっとと感じられた部分を、余裕で上回っている。メンバーのラインナップは、07年の前作『THE WILDHEARTS』(もしくは08年のカヴァー・アルバム『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE, VOL 1.』)から変わりないので、おそらくはバンド自体のモチベーションとコンディションがぐっと高まり、充実していることが、よくあらわれているのかもしれない。じっさい、中心人物でありフロントをつとめるジンジャーではなく、ベースのスコット・ソーリーがメインで曲を書き、ヴォーカルをつとめた4曲目の「THE ONLY ONE」は、つまり従来のフォーマットに則ってつくられているわけではないにもかかわらず、アーティストのカラーに見事フィットしているし、そう、そしてそう、ちょうど97年の『ENDLESS NAMELESS』に収められていた「ANTHEM」がそうであったのと同じように、パワフルな響きを持ち、重要なトピックとなりえていることで、いかに現在の体制が万全であるかを教えている。スコットの歌いっぷりは無骨だが、そのぶんガッツが入って聴こえ、シンプルなメロディをいっそう伸びやかに、ドラムの痛烈なアタック、ギターのリフがタフなグルーヴを描くなか、コーラスで重なるハーモニーはやたら輝かしい。たいへん誇らしげな響きを持っているけれど、もちろん「THE ONLY ONE」のほかにも、じつにTHE WILDHEARTSらしいと感じられる手応えの備わったナンバーが揃っているからこそ、そういう見方ができるのだ。先に小澤明久の「初心回帰的でもあり集大成的でもある」というレビューの一節を引いたが、自分なりに言い換えるならむしろ、ソロ・ワークスも含めてジンジャーがこれまでに関わってきたプロジェクトや、ギターのCJが過去に参加していたHONEY CRACKやTHE JELLYSのエッセンスをも汲み取っている形跡が節々にうかがえるのであって、それをあくまでもTHE WILDHEARTSのイメージになるたけ忠実なフォーマットに合併させていることが、たぶん『CHUTZPAH!』という実績をもたらしているのである。日本盤のみのボーナス・トラックにしたって、そりゃあこれぐらいのクオリティに仕上がっちゃったものを落としたら、もったいない。バチが当たらあ。ある意味、わがままでごった煮の作風を貫いているが、そこかしこで待ち構える大胆なフックに、いつの間にか、はまってしまう。盛り上がる。とてもいい調子だ。

 『THE WILDHEARTS』について→こちら
 ライヴ盤『STRIKE BACK』について→こちら

 ライヴ評(08年11月23日・赤坂ブリッツ)→こちら

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(09年)
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