ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年09月07日
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 いま現在、どうして高橋ヒロシのマンガには女性が出てこないのか。理由は、本人が過去のインタビューで女の子を可愛らしく描けないからと語っているとおり、あきらかになっているのだが、それは決して作風の表層のみを左右する問題ではないだろう。結局のところ、女性が関与しない物語は女性が関与しない物語以上にならない。性が一つしか存在しない世界は、まちがいなく欠如を抱えているにもかかわらず、それをしばしば都合の良さとしてしまっている点に、高橋とそのフォロワーのあやうさを個人的には感じる。ほとんど男性が登場せず、可愛らしい女の子ばっかりの作品が、ときに程度の低いポルノとしての機能に陥ることがあるのと同じように、である。そもそも鈴木ダイ(鈴木大)は、高橋のアシスタント出身ではあるものの、女の子を可愛らしく(かどうかは、まあ判断がわかれるかもしれないが)描ける作家であった。また、過去作を見てみればわかるように、決してヤンキイッシュというわけではなく、アクションSFとの親和性が高いあたりを持ち味としていた。その鈴木が、『月刊少年チャンピオン』10月号に、高橋ヒロシ画業20周年記念企画の一環とし(女性を可愛らしく描けないのに画業だなんて、とか言っちゃ駄目だよ)、トリビュート・コミックの第2弾として発表したのが、『クローズLADIES』というマンガで、内容のほうは、『クローズ』の64話目にあたる「海の見える街へ!」を、要するにパルコ・アンド・デンジャラーズもしくはスネイクヘッズ編の序章となるエピソードを、坊屋春道をはじめ作中の人物を全員、性転換したうえで忠実にリメイクしたもので、同誌の9月号でSP☆なかてまが担当したトリビュート・コミックの第1弾『セニドクロに憧れて…』が、ほら不良に憧れる坊ちゃんはこういうの好きでしょ、だったのに比べるまでもなく、ひじょうにオタク的な作法にのっとったものとなっている。地元でラビット・イヤーと呼ばれるチームに、賞金をかけられ、首を狙われたパル子は、和装戦線を率いるお龍に助けを求めるため、その街へやってきた。そしてその誘いは、お龍ばかりではなく、彼女のライヴァルである坊屋春華やビトーニャをも、あらたな戦いに向かわせることとなるのだった。原作人物の、いわゆる女体化というアレンジは、まあ、二次創作のジャンルにおいて、もはや物珍しくもないパターンだろう。それを『クローズ』の作者と出版社公認でやったというのがトピックになりえるなら、まったくめでたい話ではあるけれど、正直、ここ最近はあまり芳しくなかった鈴木ダイの色合いが良い方向に出た作品には仕上がっている。バトルのシーンも相応にかっこういいし、決まっている。一方で、性が一つしか存在しない世界の欠如を見まいとする欲望は、ヤンキイッシュなスペクタクルもオタクふうのエンターテイメントも、じつはそう大差ないことを教えている。

・その他鈴木ダイ(鈴木大)に関する文章
 『ドロップ』(原作・品川ヒロシ、キャラクターデザイン・高橋ヒロシ)
  7巻について→こちら
  5巻について→こちら
  1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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