ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年08月30日
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 作者当人の欲求なのか、編集者の要請なのかは知らないが、これまでの作品を読んできたかぎり、門尾勇治というマンガ家の資質は、正直、ミステリやサスペンスには向いていないと思われてしまう。はったりは利いているものの、ロジカルな展開がほとんど見られないので、つくられたどんでん返しに、驚かされるというより、拍子抜けしてしまうためであって、それはこの、『ヤングキング』NO.18に50ページの読み切りとして掲載された『Don't give up』においても、確認されるであろう。衝撃のパンデミック・ミステリーと紹介されているけれど、そのような題材は、必ずしもストーリーをおもしろくはしていない。近未来、「LIFE」と呼ばれる老化を抑制する新種のバクテリアが開発され、さまざまな食料品に配合、全世界で一般化していた。〈つまり…誰もが それを体内に潜めていた〉のであったが、〈その結果………〉同時多発的に、全人類が固まり、動かなくなってしまうという奇病が発生する。まるで時間が静止したかのような世界、なぜか異変から逃れられた青年、勇樹は、恋人である加奈に必死な呼びかけを行うが、彼女は蝋人形みたいに笑顔をたたえたまま、何も答えてはくれない。耳を胸に押し当てると心臓が働いている以上、死んではいないにもかかわらず、まったく反応をしてくれないのである。それは他の人びとも同じであった。戸惑いながらも勇樹は、沙希という、やはり「LIFE」の影響から助かった女性と合流する。彼女の恋人が「LIFE」の研究者であり、その実用化に疑問を持っていたことから、もしかすればワクチンが存在する可能性を信じ、彼のもとへ向かう二人であったが、都市機能は完全に停止、動くことのできる人間がいたとしても、すっかり暴徒化しているのを見、絶望を抱かざるをえない。この絶望に対する解答が、すなわち題名の『Don't give up』に通じているわけだけれども、そうした精神論の組み立てが、うまく物語に落とし込まれていない。まあ、設定の細かさ自体、高度なSFのファンからしたら難のあるところかもしれない、が、それ以前の段階、必ずや希望は信じられるという内容にどう説得力を与えるかのレベルで、あまり整合性を感じられないのだ。マンガの背景と作中人物による決断の合間、もうすこし、齟齬が埋まって欲しい。

・その他門尾勇治に関する文章
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
 『欺瞞遊戯』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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