ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年08月24日
 パンドラ Vol.4 (講談社BOX)

 ここ最近にかぎらず、よしもとよしともの活動を追っていると、カットは描けるし、文章は書ける、けれども、なかなかマンガをやってくれないのは、きっと難しく考えすぎているからなんじゃないか、という印象を持つし、そこに作者の、マンガ家としての矜持があって、最大の資質が見え隠れしている、といえば、おそらくそうなのだろう。『見張り塔からずっと』は、『パンドラ』Vol.4に掲載された。2ページのマンガを、小説でサンドイッチするかたちの、作品である。よしもとにはすでに『西荻タワー』(04年、『文藝別冊 やまだないと』掲載)という小説があるが、ああ、ふたたび塔(タワー)だ、と思う。『西荻タワー』には、文字どおりのタワーがそびえ立っていたが、ここでは巨大な観覧車がそれを果たしている。〈観覧車の頂上から見た遊園地の外の景色は、やはり濃い霧で覆われていた〉のだった。そうして作中に浮き沈みするモチーフ、高い場所から空、あるいは死者、もしくはこの世界に居場所を感じられないにもかかわらずこの世界でしか生きられない人びと、揺るぎなく過ぎ去る時間、といったさまざまは、もちろん、よしもとの過去作においても重要なトピックになりえていた。この意味において、従来のイメージを裏切っていない。小説とマンガをミックスした手法は、必ずしも「4分33秒」などの実験的なアプローチと趣を同じくしない。むしろ、作者が自分のモチベーションを判断するための材料、確認作業のようにさえ、受け取れる。以前のインタビューを紐解くまでもなく、暗い目をした子供、不自由さを得た中年、こうしたテーマに対し、どうすれば希望のイメージを与えられるかは、あるとき以降、よしもとの創作にとっておおきな課題となっている。それを現在の筆力で、できるだけマンガに近づけようとしたのが、ここまでなら何とかやれるよと意思表明してみせたのが、『見張り塔からずっと』だという気がする。たぶん重要なのは、そこから眺められる先であって、よしもとが苦心しているのもそれ、『魔法の国のルル』の、あの空の向こう、虹の向こうにひらけている世界はまだあらわれていない。

 『ブロンちゃんの人生相談室』について→こちら
 『4分33秒』について→こちら(01年に「NEWSWAVE ON LINE」内のコンテンツに書いたもの)
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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