ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年08月21日
 ヤンキー・マンガは生き方を教えられるか。たしかにこれは、フィクションは教えられるか、というふうに敷衍できる問題なのだけれど、ヤンキー・マンガにおいて生き方の云々は、直接的かつ具体的なテーマとなりうるため、ことさら提議したくもなる。が、しかし幸か不幸か、たいていの人間はそれを修身の書として読んでいるわけではないので、作者は表現のレベルに深みをつくる必要もないし、あるいは自分の倫理を素直に述べることが表現の深みだと思ってしまっている、と受け取れる。この問題に対するおそらく懐疑となっているのが、過去にもさんざん書いてきたけれど、高橋ヒロシの我妻涼(『QP』の登場人物ね)に向けた反省である。だがそれは『WORST』に持ち越されながら、『WORST』が長篇化するにつれ、じょじょに霧散していったように感じられる。後発の作家にしてみても、そうした問題の表層ばかりを引き継いでしまっており、むしろだからこそ、自分はシリアスなんだぞ、というスタンスが、必ずしもすぐれた表現をもたらさず、所詮はったりにしか見えない場合が多い。同時に、コメディ(という批評性)をおもしろく(正確に)描けなくなっている。

 たとえば『漫'sプレイボーイ』VOL.2掲載のインタビューで、柳内大樹は、自作の『ギャングキング』について〈絵柄はヤンキー漫画だし、それを求められるけど、自分では今、メッセージ性の漫画だなと。だから上っ面だけだとバレる気がするし〉と言っているが、それすらも結局は、登場人物がさかんに「想像力」と口走るばかり、いかにもなポエムで辻褄を合わせているにすぎず、たかだかその程度のことが〈俺の漫画が変わってるのは「深く悩んだもん勝ち」というか、人として一生懸命、真面目に考えた奴がケンカも強くなるって漫画にしてるからですかね〉と作者に思わせているにほかならない。

 この、『コミックブレイク』NO.5に発表された読み切りマンガ『スマイル』は、柳内大樹と、『Hey!リキ』の永田晃一による合作である。柳内と永田の親密な付き合いは、『フィギュア王』NO.131の「なかてま連合Meeting」という座談会を参考にすると、すでに10年以上のものとなっていて、たぶん、両作者の意識のうえでは、これもまた〈絵柄はヤンキー漫画だし、それを求められるけど、自分では今、メッセージ性の漫画だなと〉という点で、合致が得られているのではないかと思われる。ただし、まあ企画自体がプレゼンスであるような作品にどうこういっても仕方のないことではあるが、しかしやはり、内容のほうは、あまりはっとしない。8ページのうち6ページを上下に区切り、ケンカ(タイマン)する少年たちの内面をそれぞれが担当するという形式で、マンガは描かれている。そしてそれは、今日のフィクションにお馴染みの、生まれや育ちによって主体は形成される、というテーマに集約されてゆく。いや、もちろん、悪い影響や抑圧からいかに脱するかが本質の部分であって、二人の少年が出会いを通じ、本音をひらき、解り合える他人になることが、あかるいハッピー・エンドをもたらしている。

 いい話じゃないか、といえば、まさしくそのとおりだろう。だが、物語の整合性をとっているのは、基本的にポエムと説明なのだ。とくに永田のあらわしているパートが、その役割を果たし、これだけ詳しく説明してもらえれば、印象づけのポエムにも、ああそうね、と頷くしかない。だってそうなんでしょ、と口を挟んでも仕方があるまい。合作の方法を良いふうに解釈するなら、お互いの作風が対照になっている点であって、それは間違いなく意図的に行われているのだが、すべてを単純化する以上の功績は見られず、登場人物が持っている深刻さを必ずしも濃くはしていない、もしかすれば薄っぺらくさえしてしまっている。結果、じつはメッセージがどうであれ、拳を交わしたら友情が生まれる、と短絡するヤンキー・マンガの思いなしを越えてはいない。

・柳内大樹に関する文章
 『ギャングキング』
  16巻について→こちら
  15巻について→こちら
  14巻について→こちら
  13巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
 『柳内大樹短編集 柳内大樹』について→こちら
  「バンカラボーイズ」について→こちら
  「オヤジガリガリ」について→こちら
 『ドリームキングR』(原作・俵家宗弖一)
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ドリームキング』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら

・永田晃一に関する文章
 『Hey!リキ』(原案・高橋ヒロシ)
  14巻について→こちら
  12巻について→こちら
  10巻について→こちら
  9巻について→こちら
 『ランディーズ 完全版』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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