ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年07月31日
 Hello-Goodbye(ジャケットC)

 先行するV6のシングル『スピリット 初回生産限定(MUSIC盤)』に収録の2曲を聴いた時点ですでに、予感されていたことではあったけれども、このComing Century(以後、カミセン)のミニ・アルバム『Hello-Goodbye』は、おそらくファンのあいだで傑作の呼び声を高めていくことになるだろうね、という内容に仕上がっている。いや、自分自身がそうだから言うのだが、熱心なファンでなくともいい、それでも十分に届いてくるぐらい、すべての楽曲に凝らされたアイディアが功を奏し、カラフルに、とても鮮やかな世界を切り拓いている。

 ひとまず、タイトル・トラックにあたる「Hello-Goodbye」からして、その印象をつよく押し出しているだろう。『スピリット 初回生産限定(MUSIC盤)』の「Desert Eagle」と同じく、SpontaniaとJeff Miyaharaの提供によるナンバーである。しかし、低音のラップを主体に、シリアスなトーンを前面にしながら、ネガティヴな空気のなか、希望のメッセージを込めた「Desert Eagle」とは違い、ギターのカッティングと打ち込みのビートが軽快なリズムを刻むイントロ、親しみやすいメロディでもって「きみとぼく」の世界観をコーラスに、フックをつくり、やんやテンションをアップさせる曲調は、まあ、くるりの「ワンダーフォーゲル」以降、この国のポップ・ソングに根付いたフォーマットの応用にすぎないけれども、ヴァリエーションにラップを加えたトリプルのヴォーカルが、幾重ものイントネーションをともない、そして響き渡る様子は、純粋に楽しいし、盛り上がる。

 続く「Black-out」は、ピッチがはやく、モダンで大味なハード・ロック、発音のあやしさを選んでまで全編が英語詞であることの特徴は、かっこうのよさよりもむしろ、メロディの乗せ方にプラスの成果を与えている。もうすこし、バックのサウンドがパワフルなほうが嬉しかったし、いささか、ダイナミズムに物足りなさを感じるものの、アルバム全体のバランスを考えたとき、ここで得られる勢いが、貴重なアクセントになっていることは間違いない。じっさい、わりと単純な構成の「Black-out」のあと、「手のひらのUNIVERSE」のようなナンバーを出してきたのには、びっくりした。「手のひらのUNIVERSE」、もしかしたらいちばんのハイライトである。

 女性アイドル・グループ、Buono!の「恋愛ライダー」や「ゴール」のソング・ライティングで、才気走ったところを見せていたAKIRASTARが、作曲で携わった「手のひらのUNIVERSE」は、スローなテンポを用いたスペーシーなトラック、ときおりヴォーカルにエフェクトをかけ、ひじょうにドラマティックで、ユニークな音のひろがりを聴かせる。ミックスを寺田康彦(元Scudelia Electro)が手がけているかいもあってか、電子音のうにうにとうねるバックのサウンドが、たいへん心地好い。Buono!の「ゴール」がそうであったように、洋楽をダイレクトに参照している雰囲気もあるけれど、わりと大胆なアプローチを、日本のポップスの機能にうまく落とし込んでおり、良い意味のけれんに溢れ、もちろん、カミセンの三人が、それぞれの声質で、先に述べたとおりエフェクトがかかっていたりするにもかかわらず、ナイーヴな心象を拾い上げ、エモーションをあらわしているのにも、マッチしている。

 4曲目の「Forget it all」は、作曲をJazztronikに任せたナンバーで、調べたら、作詞の為岡そのみもJazztronikに所縁のアーティストなんだね。とにかく、小気味よいビートの運動が、ダンサブル、の一言に尽きる。

 それにしてもこうして耳を通していると、森田くん、三宅くん、岡田くんのヴォーカルには、別個であっても重なり合っても、カミセンならではの、しるし、となるようなチャーミングさがあることに気づかされる。5曲目の「想いのカケラ」などは、とくにそれがよく出ている楽曲だと思う。ギターのリフとドラムのアタックによって展開される、いかにもパワー・バラード・タイプのナンバーだが、せつないフレーズを、リレーしながら、ハーモニーしながら、ラヴ・ソングの輝きをつくってゆく。

 たぶん、全曲中、もっともアイドルらしい表情をうかがわせるのが、6曲目の「Precious Song」である。これもまたダンサブルなナンバーだが、クラブ・ミュージックに架橋する「Forget it all」とは異なり、あくまでもさわやかなコーラスをメインに、派手なステップの似合いそうな点に、正しくアイドルらしい、と認識させる特徴がある。あるいは反対に、これ以外の楽曲がいかにチャレンジであったかを実感させられるのであって、それをラストに持ってきたのは、あきらかに、狙い、だろう。

 DVDもしくはソロCDの付属する初回限定盤は、以上の6曲で終わる。が、通常盤にはその次に、ソナーポケットが提供した「ファイト」が入る。コードのはっきりとしたアコースティックのギターをループ状に、アンサンブルの厚みで、ゆるやかな起伏が、じょじょに膨らみ、膨らみきったあたりを目安とし、ポジティヴなメッセージが主張的になり、フィーバーするという、じつにスタンダードなダイナミクスを採用している。オーソドックスであるがゆえに、ヴォーカルの個性が、そのまま楽曲の熱量に換算されることになるのだけれど、ここでもカミセンの三人は、十分に力強い魅力をうたう。三宅くんと岡田くんの、キーの高低によるコントラスト、森田くんが、両者の合間をとるかのよう、調和的なバランスで、まっすぐ。そしてユニゾン。

 すべてのナンバーにいえる。彼らの存在とともに、アイディアは生かされ、カラフルで、鮮やかな世界を、切り拓き、届けようとするのだった。

 V6『スピリット 初回生産限定(MUSIC盤)』収録曲について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(09年)
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