ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年07月26日
 香魚子の『さよなら私たち』は、純粋な少女マンガのラインで見るより、たとえば佐原ミズあたりが持っているナイーヴさを好むような層に受けそう、といった感じの読み切り作品集である。たしかに初期の頃の一篇、「失恋ファミリーレストラン」は、現代的な『別冊マーガレット』の系を意識したタッチの絵柄になっているが、本質的にはそうではないことが、他の篇からはうかがえる。ストーリー自体も、シンプルなラヴ・ストーリーとは逸れていて、なんとなくこう、根が暗い。むろんそれを、線の印象も含め、繊細と言い換えてもよい。おそらく、完成度の面でいうなら、もっとも新しい「時をかけるまえに」を挙げるべきだろう。カヴァーからして、本当はこれを表題作にしたかったんじゃないかな、という気がするけれども、題名があまりにもあんまりなので、今のものになったんだと勝手に推測する。「時をかけるまえに」の舞台は、すでにタイムマシンの完成が予見されている未来、そのようなSFの設定を用い、とある少女と少年の恋愛を、幸福とは何か、いくとおりもの解釈が許されるなかに、残酷な結末がせめてものせつなさに変わるよう、描いている。作者は現在、少女小説である『伯爵と妖精』のコミカライズを手がけているが、今後、このぐらいのクオリティでオリジナルの作品を発表していければ、おおきくファンを増やすことになるかもしれない。ただし個人的には、すべての篇を読み終えたとき、屈託している物語をあらわす手つきにいったいどれだけの躊躇いがあるのか、あって欲しいという意味で、ほんのすこし、疑問を覚えるところがあった。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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