ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年07月19日
 すこしばかりおさらいをしよう。同一の世界観をシェアする立原あゆみの作品群においては、風組(『本気!』シリーズ)、関東一円会(『JINGI』シリーズ)、極地天道会、の三大勢力が互いを牽制し合うことで、日本の極道社会の均衡は保たれている。余談になるけれど、それらの図式からは独立しながらも一目置かれているのが、けもの会は猩猩組の、壁村耐三である(『あばよ白書』)。そうして下部の組織や末端に位置するヤクザたちの、欲望、諍い、血を流す様子が、いくつものヴァリエーションを生んでいるわけだ(『東京』、『弱虫』、『極道の食卓』、『恋愛』等々)。が、より巨大なレベルで見るなら、その大半は、先述した三すくみのバランスを、崩そうとし、守ろうとし、結果的には強固にするための運動、闘争だといえる。たとえば、無印の『本気!』では、風組の内紛が、雨降って地固まるような結末をもたらしていた。たとえば、『本気!サンダーナ』では、極地天道会の内紛が、やはり雨降って地固まるような結末をもたらしていた。そして『JINGI』シリーズでは、関東一円会の内紛が、同じくなってゆくことが、この『仁義S』の10巻の、墨田川会のトップである仁と義郎、実質上極地天道会のトップである飛田の三者会談のなかで、暗示されている。

 関東一円会から分かれ、極地天道会にすり寄ろうとする六星会をめぐり、それぞれの幹部がついに顔を合わせるのである。飛田の参入は、『本気!サンダーナ』を読んでいるファンにしたら、けっこう盛り上がる箇所ではあるが、それはともかくとしても、立原の作品世界全体にかかるビッグ・イベントだろう。しかし、一円会も極地天道会も、正面切って事を構えたくない。もしもそうなってしまえば、これまでに築き上げてきた均衡が壊れてしまう。風組を巻き込んでの波乱が日本中を覆うかもしれない。そこでまず飛田は、悶着の種になりかねない六星会を潰し、その縄張りを一円会と極地天道会で折半しないかと持ちかける。だがこれに仁と義郎は首を横に振る。彼らは〈関東割るわけにはいかないと言ってるんです 割れば争いが起こるは必然〉と主張するのだった。では、そのかわりにどのような提案がなされるのか、ここに立原らしい方便が見られる。関東を割るぐらいなら、一円会もろとも極地天道会にくだり、風組との緊張をキープしたほうが穏便、とのたまうのだが、いずれにせよ〈全国がひとつになれば 進歩ってやつが止まる 少々のセクトは必要というわけです〉という義郎の言葉は、『仁義S』が、いや立原のマンガ自体が持っている構造自体を指しているかのようですらある。

 他方、若き仁義たち、つまり主人公のアキラやドクター大内は、まさしくそうしたセクトのごとき役割を果たしながら、じょじょに頭角をあらわしてゆくことになる。これをよく思わないべつのセクトが、守などの彼らと同世代のヤクザたちにほかならない。そうしたセクト同士の小競り合いが、大状況に対し、いかなる影響と進歩をもたらすのか、物語は新しい局面に入りつつある。

 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら 
 3巻について→こちら

・その他立原あゆみに関する文章
 『本気!〜雑記〜』第1話について→こちら
 『本気』文庫版
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  1・2巻について→こちら
 『恋愛』
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『極道の食卓』
  8巻について→こちら
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ポリ公』
  4巻について→こちら
  2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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