
俗に、エモ、と呼ばれるサウンドは今や、一時のムーヴメントというより、一種のスタンダードになっており、歴史の縦線で見ても、ジャンルの横線で見ても、これだけ広い範囲に伝播、普及し、リアルタイムのかっこうを維持したまま、廃れていない音楽性は、そうあるもんじゃない、と思うのであったが、しかし同時に、インパクトや新鮮さの面で考えるなら、とくに驚くものは聴かれなくなってしまっている。共感のメロディを軸足にしながら展開してみせるかのような基本線は、ある意味、保守的ですらあるだろう。こうした事情を、TAKING BACK SUNDAYの、通算4作目となるフル・アルバム『NEW AGAIN』も違えていないのだけれど、その、青くさいエモーションのドライヴ、男のロマンティシズムをにおわせたドラマの高まりには、随一の輝きがあって、やはり魅せられる。今回から元FACING NEW YORKのマット・ファジーが、サイドのヴォーカルとギターでバンドに加わっているため、彼のインプット次第ではもしかしたら、プログレッシヴ・ロックふうのアプローチなど、多少のモデル・チェンジはあるかな、と事前に踏んでいたのだが、じっさいには従来のイメージを覆すほどの変化はない。なかった。ただし、ギターのリフを含め、リズム全体の表情が豊かになり、02年のファースト・アルバム『TELL ALL YOUR FRIENDS』とはまた異なった激しさをもって、ダイナミズムが盛り返してきている。一方で、だ。繊細なタッチの多くなっていることが、メランコリックな翳りを、より深く主張的にしているというか、サウンドの総和からは、以前にも増して、こく、が出てきているような印象を受ける。
『LOUDER NOW』について→こちら
『WHERE YOU WANT TO BE』について→こちら
バンドのオフィシャル・サイト→こちら