
スズキユカの『おうちでごはん』は、とても和やかな料理マンガである。それはこの3巻も変わらない。しかしどうして、登場人物の言動はみな、忙しなく、わりと落ち着きがないのに、こんなにも穏やかな触感になるのか。極端にいうなら、クレッシェンドのごときドラマ性をうしろへ引っ込めているためだろう。いちおうのストーリーはある。一人暮らしを営む大学生の主人公が、料理の腕前を通じ、アパートの隣人たちと交流を深めてゆくのだが、肝要なのは、あえてそこに過剰な出来事を付け足さないことで、すべてのコミュニケーションが日常の一部に帰する、そのなかから引き出された各人の個性を、作品の和音としているのだ。たしかに、主人公である鴨川耕太のおっとりとした性格に、癒しの効果を見ることもできる(まあ、ね)。だがそれによってのみ、アップとダウンの運動で波打つエモーションが、調停されているわけではない。ここに収められているものでは、餃子の回に、『おうちでごはん』の特徴がよく出ていると思う。単純に、知り合いが集まって、手作り餃子のパーティを開く、というだけの内容なのだけれども、わいわいがやがや、騒がしいはずのやりとりが、ほんとうに羨ましくなるぐらい、ゆったり、チャーミングなスペースをつくる。
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