
いやはや、天才っているところにはいるもんだな。あまりにもブリリアントなのに驚き、思わず、おいおい、これ、ほんとうに新人さんの作品かよ、と疑ってしまったのであったが、本格的なデビューの前にも第1回「ドラゴンカップ」(講談社『少年マガジンドラゴン』)等にエントリーされていたり、もしかしたら熱心なマンガ・ファンや一部の編集者からはすでに注目を集めていた可能性が高い。結果としては、集英社の第1回『金のティアラ大賞』の大賞を得ることによって登場してきたわけだが、受賞者に与えられる2年間の専属契約という項がなければ、他の出版社からのデビューだって十分にありえただろう。いずれにせよ、破格の新人とは、こういう作家のことをいう。片山あやかの『Star man(スターマン)』、1巻である。
ユキコ(雪野由紀子)17歳、ユキオ(由紀夫)15歳。両親が共働き、出張も多く、留守になりがちな家で暮らす姉弟のもとへ、ある日、突然、小型の宇宙船が突っ込んでくる。惑星「ビーンズ」のマメオ(マ・メオ)と名乗る男は、宇宙船が直るまでのあいだ、自分を雪野家に置いて欲しいと言うが、当然、しっかり者のユキコは眉間に皺を寄せる。しかし、脳天気でお調子者のユキオは、とくに躊躇う様子もなく、マメオの提案を受け入れてしまうのであった。
こうして幕を開ける奇妙な共同生活の風景を、『Star man』は、どたばたとしたコメディのなかに、ほんのすこしのリリシズムを加えながら、描いているのだけれども、あらかじめ述べたとおり、これがまたひじょうに冴え渡っている。なんて言えばいいのだろう。その作風は、きわめてオーセンティックであることと、どこかずれてユニークであること、そしてたいへん現代的であることの、トライアングルの、ちょうどど真ん中を、猛スピードでストライクしてゆく感じ、しいて喩えるなら、矢沢あいが楳図かずおと鈴木志保と東村アキコを参照しながら『ちびまる子ちゃん』を描いたつもりが『コジコジ』になってしまったふうとでもいおうか、とにかく、規格内で遊びつつ規定外のことをやっているような羽根ののばし方をしている。
宇宙人のマメオって、要するに、デヴィッド・ボウイをモチーフにした伊達男だ。ラヴのニュアンスも多少はあるけど、ロマンティック・コメディの、あくまでもコメディとしての自由奔放さ、絵のセンスも構図もテンポもよく、ジャンルに偏らない楽しさを満たしているので、おそらくは今後、より大勢の支持者を掴まえていくことになるだろうね。とても好き。
