ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年06月26日
 ファンタジウム 4 (モーニングKC)

 今や立派な評価を得ているマンガなので、いちいち確認するまでもないのだが、それでもやはり杉本亜未の『ファンタジウム』には、感心させられることが多い。この4巻では、類い希なるスター性を買われた長見良少年が、大手芸能プロダクションと契約を結び、派手なプロモーションのなか、これまでになかったぐらいの大舞台を踏まんとする過程が描かれているのだけれども、おそらくは「ESCAPE ARTIST」と題された(次巻へと続く)エピソードのクライマックスにあたるのだろう、驚愕に相応しい脱出マジックの実現に向かって、一連なりのドラマが成立してゆく、物語の動いてゆく、そうした様子の脈々としたところに、ふっ、と掴まれ、引き込まれてしまう。鳥井金庫店の挿話や、もう一人の主人公とでもいうべき北條英明の勤務先であるソシオセキュリティのコネクションや、数々のタイミングが、まるで良のマジシャンとしての欲望に呼応するかのよう、一種の運命的な偶然をつくり出すあたりに、フィクションならではの心地好さが溢れている。一方、そのなりゆきが、うんうん、と頷けるだけの魅力を持っているのは、作中人物の言葉を借りるわけではないが、どんなすぐれたフィクションだって人間先にありき、という理が使えるのであれば、人間の面倒くさい関わりを、適度にデフォルメしながら、しかしピントのぼやけていない精確さで、射貫いているためであって、あんがい北條もそうだし、教師の山村やクロスプロのマネージャーである岩田徹子など、作中の人びとが、まったくの善人でもなければまったくの悪人でもないのはちょうど、良という光をさらに輝かすかのようなプリズムの、多面体の役割を思わせる。そしていくらかの波瀾万丈はまるで、周囲の尽力によって良に集まってくる注目が、はたして彼の一面を見ているにすぎないのかどうかを、試している。

 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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