ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年06月13日
 畑亜希美の『ベイビー☆キスをどうぞ』はこの2巻で完結、前シリーズである『ベイビー☆お手をどうぞ』と合わせて全3巻の内容でまとまっている。終盤、シリアスな展開になるにはなったものの、それすらも愉快な調子のまま走り抜けているのが、とてもよかった。楽しかった。新人ネイリストのそのみと彼女が勤めるサロンのオーナーである心二の、でこぼこ、騒々しいやりとりは、ちょうどマゾっ気抜群のどじなヒロインとサドっ気抜群でやり手なイケメンさんが、諍い、乳繰り合うような、つまりあの手この手のラヴ・ストーリーの、極度にユーモラスなヴァージョンとなっており、そこがとてもチャーミングで、とにかくまあ、ふつうなら暗くなりそうな話題も、テンションを落とさずにずうっと、ヒモパン、ヒモパン、って言い続けたのは見事である。クライマックスで、そのみに対し、恋愛をとるか夢をとるか、の選択と決断が迫られるのだけれども、もちろんそれ自体が、お約束とでもいうべき定型的なパターンであって、もしかしたら一種の現実性を汲んでいるため、深刻度の高いドラマになりうるのかもしれないが、うだうだいじけてしまいがちな話の筋も、持ち前の明るさで吹き飛ばしている。あまりのハッピー・エンドぶりに、都合がいい、という意見もあるだろうけれど、いやいや、一挙両得をものにしたそのみのガッツが、すばらしいんじゃないか。このマンガにはそれぐらいの勢いがあってもよい。だいいち、そのみのモチベーションが、心二の評価によって成り立っていた事実を考えるなら、両想いの成就が、彼女の器量をよりよくしているのは必然であり、それが大団円をもたらしているのであれば、物語上の辻褄は合っているし、ラストのエピソードにおいて、メインの視点、モノローグの持ち主が、いったん心二にスイッチし、そのみのがんばりは、読み手からは見えないようになってしまう、こうした手法を生かし、感動的な一コマの前にさえ、ギャグを盛り込んでくるところに、『ベイビー☆キスをどうぞ』という作品の本領はあるのだと思う。

 1巻について→こちら

 『ベイビー☆お手をどうぞ』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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