ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2006年01月23日
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 これまでにもSMASHING PUMPKINS略してスマパンのトリビュートは数種出ているが、この『the killer in you a tribute to SMASHING PUMPKINS』は、いわゆるスクリーモあるいはメタルコアのジャンルに属する、要するに、イマドキの若手ラウド・ロック勢を集め、制作されたものである。全部で11曲、11のアーティストが参加している。いちおう僕は、スマパンの熱心なファンのつもりであるけれども、まあ、けっして悪くはない内容であると思う。というのは、どのアーティストも、原曲のイメージを崩さず、わりと忠実に再現しており、いま現在10代または20代前半で、これまでにスマパンを聴いたときがないリスナーに向けてのプレゼンテーションとして、これは、十分に生きていると感じられるからだ。

 アルバムはROSES ARE REDによる「CHERUB ROCK」によって幕を開ける。邦題「天使のロック」は、その影響下にあるいくつもの邦楽アーティストが同名異曲を作るなど、ある意味では、スマパンを象徴する1曲であり、出世作にあたる93年のセカンド『SIAMESE DREAM』の冒頭を飾るナンバーでもある。クリーンなトーンのギターが中盤でザクザクと鳴り出すあたりに、ROSES ARE REDのカラーが出ているが、とくに凝ったアレンジが施されているわけではなくて、その違和感のなさが、じつに導入部には相応しいといえる(確認していないが、たぶん、ROSES ARE RED『CONVERSATIONS』日本盤のボーナス・トラックと同じ音源ではないかな)。

 2曲目はA THORN FOR EVERY HEARTの「JELLY BELLY」である。これも違和感がない。もともとが95年の2枚組大作『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』のなかでも、ややヘヴィかつハードコアな傾向にあるナンバーであるが、そのアグレッシヴさを、なんとか乗りこなそうとしている。ギターの音が圧で潰れてしまったかのようなものでないところは、まあ仕方がないとしても、ただ連打しているだけのドラムには、いささか物足りなさを覚える。しかし、ああ、それこそが無い物ねだりというものに違いない。ジミー・チェンバレンは、やっぱすげかった。

 POSON THE WELLが意外な一面を見せるのが3曲目の「SOMA」だ。原曲は『SIAMESE DREAM』収録の、穏やかで物憂げなナンバーである。ヴォーカルも含め、たぶんここまでソフトな演奏に徹しているものはPOSON THE WELLのオリジナルにはない。裏を返せば、匿名的なカヴァーになってしまっている。前半部のアコースティカルなパートはともかく、後半部のダイナミックに盛り上がる箇所も、やけに行儀がよい。とはいえ、グランジィなドローンとした部分を引き出した点に、評価を与えるべきか。4曲目は、デビュー・アルバム『SOUNDTRACK TO HEADRUSH』の日本盤ボーナス・トラックに、やはりスマパン「DISARM」のカヴァーを提供したEMANUELによる「MAYONESE」である。「DISARM」「MAYONESE」ともに『SIAMESE DREAM』の楽曲で、このバンドにとってはフェイヴァリットなアルバムなのだろう。じつは『the killer in you a tribute to SMASHING PUMPKINS』におけるベストは、この「MAYONESE」ではないか、という気がしている。ナイーヴなエモーションをコマーシャルの枠内でハードな方面にコントロールしたスマパンの、ある意味ではチープ・トリック的な本質を、うまい具合に再現しているように感じられる。続くARMOR FOR SLEEPの「TODAY」もなかなか。「TODAY」も『SIAMESE DREAM』に収められたミドル・テンポの楽曲で、スマパンの代表曲と見なす人も多い。それをARMOR FOR SLEEPらしい、力強く、爽やかな演奏で彩る。6曲目で、映画『ロスト・ハイウェイ』のサントラに提供された「EYE」をプレイしているのは、HOPESFALLである。「EYE」は、どちらかといえばニューウェイヴ色の濃い、エレクトリックかつスタティックな曲調であるが、そのダークな表情をそのままに、HOPESFALLのヴァージョンは、演奏における肉感的な部分を強調することで、総体としての温度をすこし高めに設定している。

 個人的にペケをつけたいのが、A STATIC LULLABYによる「THE EVERLASTING GAZE」である。原曲は、00年のラスト・アルバム『MACHINA / THE MACHINE OF GOD』をキック・スタートさせる攻撃的なロック・ソングであるけれども、いや、まあ、そこにガナっているヴォーカルを加えるだけという発想を、安直と言わずに、何と言えばよいか知らない。バックの演奏は原曲よりもすこしばかり重ためで、ギターはいい、ドラムもいい、ベースもオーケー、クリーンなほうのヴォーカルも悪くはない、ただノー・エモーションなスクリームが最悪で、全部を台無しにする。それはけっして好みの問題ではないと思うよ。

 おそらく本作中で、もっとも独自な改変を施しているのが、『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』の「1979」を取り上げたVAUXであろう。「1979」の、あえて大仰な部分を用いない、淡々とした進行を、VAUXは、リズムの部分をアコースティック・ギターに任せ、その上に大胆なバンド演奏を盛り込んでいく。いや、コーラス部における畳み掛け方が「1979」の「TONIGHT, TONIGHT」的解釈といった感じで、けっこう聴かせるのであった。9曲目は37 LEAVESの「ZERO」である。「ZERO」は『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』に収録されている。じつは37 LEAVESに関しては、本作中で唯一オリジナル音源を聴いたことがないバンドである。これを聴く限りでは、硬派なメタルコア・アクトなのかな。まさにそういう仕上がりになっている。あ、ごめん、10曲目MURDER BY DEATHの「WE ONLY COME OUT AT NIGHT」は、VAUX以上に独特なアレンジかもしれない。どこかほのぼのとして牧歌的な印象の原曲を、MURDER BY DEATHはエレガントかつジェントルなものへと、イメージ・チェンジしている。渋いヴォーカルとチェロの暗い響きは、バンド本来の持ち味だが、しかしこれでは、まるでポール・アンカかパット・ブーンではないか、というぐらいにアダルトな振る舞い。

 でもって『the killer in you a tribute to SMASHING PUMPKINS』は、ラスト、EIGHTEEN VISIONSの「QUIET」(『SIAMESE DREAM』)によって、締め括られるのだが、これがかなりの迫力で、じつに今風のヘヴィなサウンドに器を移し替えている。このナイスなマッチングは、とりたてて奇を衒うのではなくて、バンドが自分たちの特性にあった選曲をしたことによる帰結だろう。ゴツゴツとした質感の強さに、野暮な感性を見る向きもあるかもしれないけれど、最初にも言ったように、若い世代のリスナーに向けたプレゼンテーションと考えれば、過不足のないインパクトを伴った出来映えである。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(06年)
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