ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年06月08日
 なにわ友あれ 8 (ヤングマガジンコミックス)

 いつの時代であれ、童貞のマインドをこじらせたら手に負えないのはいっしょ、不良だろうが坊っちゃんだろうがオタクだろうがヤンキーだろうが大差なく、そのまま性根を腐らせてしまえば、変態か畜生に成り下がるしかない運命かい。90年代に環状族と呼ばれた大阪の走り屋を描いているのが、南勝久の『なにわ友あれ』だが、そのモチーフ上、男性の行動原理がテーマの位置を占めており、たとえば、自動車というアイテムから離れても、男性性の横暴が女性という主体を苦しめることがありうる危うさを、ベンキみたいなクソ野郎の存在を通じ、おそらく、作者は自覚的にあらわしてきているわけだが、この8巻では、準主人公(もしくは主人公)であるテツヤの恋人、ナツに密かな感心を抱くパンダがやっちゃった。いや、正確には、やっちゃいそうになっちゃった、か。テツヤを自分の部屋に住まわせているパンダは、改造モデルガンのダメージを股間に受け、まるでインポテンツのようになってしまっていた。しかし、ナツに対していやらしい想像をしているときだけは立派に欲情することができるのだった。テツヤが不在の夜、アパートでナツと二人きりになったパンダは、あろうことか、背後から彼女を押し倒してしまう。まあ、結果的には未遂に終わったとはいえ、このくだりはほんとうに最低だよね。パンダの個性を、半ばシンナーでラリっている点も含め、特殊化することで、いちおうギャグとして受け取れなくはないのだけれども、もてない人間にありがちな我執に還元するのであれば、過剰な妄念のありようは決して例外的なものではないだろう。言い換えるなら、一般化してしまうことも可能なのである。馬鹿が、強姦の力関係で女性を組み敷いたところで、何の解決にもならないのに、そのような事件や動機が世間からまったくなくなることはねえんだ。いずれにせよ最悪だよな、パンダ。一方、グッさんのスパーキーに入り、鍛えられるテツヤは、トリーズンの初代会長、ヒロが所有しているワンダー・シビックをめぐって、トリーズンの新進気鋭であるバクとの対面を果たす。テツヤを自分の愛車の運転席に座らせ、力量をはかってやろうとするバクは、走りから感じられてくる意外なセンスに驚かされるのだった。いっけん生意気だが冷静なバクもそうだし、パンダみたいな駄目人間や、この巻でスパーキーに入ってくるケンカ屋のカワチンなど、それぞれべつの性格をもって青春を生きる同世代たちと、テツヤの対角線下に照射されているのは、やはり、すべて、男性の行動原理にほかならない。それが、90年の〈当時 大阪では様々なスタイルの環状チームが――‥‥生まれては消えた――台数と人数増強を目指し ステッカーをくばりまくるチームもあれば――ステッカーの売り上げで金儲けに走るチーム――ケンカや根性でメンバーを人選するチーム――そして環状で走りをテストするチームなどは――‥‥テストの段階で大事故を起こし――‥‥ケガ人や廃車になる者たちもいた‥‥名を上げたチームのステッカーは当時の若者にとって――ブランドと化した――〉という背景の、軍記もののアレンジともとれる物語へと集約されているのだが、ディテールの描写をべつとするなら、作品の性質から必然的に要請される男性性の美化に対し、どこまでの批評と抵抗を加えながらマンガを成立させられるかが、たぶん、『なにわ友あれ』の、最大の課題であって、テーマの重要な行く末を担っている。ところで、表紙カヴァーの折り返しに、ついに作者の近影が登場したのであったが、なんだよ、作品のイメージどおり、ちょっとおっかねえ面構えじゃないか。

 7巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 1巻について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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