ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2009年05月29日
 かつて、武論尊が平松伸二と組んだ『ドーベルマン刑事』は、初期の頃こそ、殺伐としたヴァイオレンスのなかに、半ば行きすぎであるぐらい鬼畜米英かつ護憲的な精神を盛り込み、この国がいかにあるべきかを、ハイパー・アクロバティックに活劇化していたが、女性の登場人物が賑やかになるのにつれ、ユーモラスな描写が増えていき、まるで加納が骨抜きにも見えるふうになっていったのは、まあ、いよいよ80年代が訪れようとする、そういう時代の要請とでもいうべき点を汲んでいたのだろう。それから約30年後、武論尊が、初期の加納をどこか思わせる非情な主人公、斐藤完爾の活躍を、上條淳士に託したのが、この『DOG LAW』というマンガである。タイトルに付せられた犬のイメージ、そして斐藤がバイクにまたがり、疾走し、大型の拳銃を容赦なくぶっ放すのは、たぶん、原作者の側にも『ドーベルマン刑事』に対する意識があってのことだと思わせる。警察の機能は衰え、テロが横行、右傾も左傾も甚だしく、若者はギャングに走り、カルト教団、外国人のマフィアが跋扈、ほとんど無秩序状態と化した日本、通称「D・O・G」と呼ばれる超法組織のメンバーたちは、もはや既存の正義ではくだせなくなってしまった悪を、ただ死によって裁いてゆくのみであった。『北斗の拳』のような核戦争は起こらかったにもかかわらず、なし崩し的に暴力のひろまった世界の近未来性は、武論尊の作品でいうなら、池上遼一とのタッグである『HEAT』を彷彿とさせる。すでに述べたとおり、そこに『ドーベルマン刑事』の加納の直系であるような、しかし加納ほどには法律を信じてはいない主人公が配せられている。これを上條淳士が描くというのは、いっけんミスマッチな気もするが、『8(エイト)』のあとに続く作品だと考えるなら、あながち的を外してもいない。ただし、幸福な化学反応は生まれなかったのか、全体のタッチはやや精彩を欠いている。

・その他武論尊に関する文章
 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら

・その他上條淳士に関する文章
 3巻について→こちら
 2巻について→こちら
 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(09年)
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